当社の事業目的は、ITによって製造業のエンジニアリング・プロセスを効率化していくことです。エンジニアリング・プロセスの効率化は、設計や製造のみならず、調達、サービス業務の効率化を通じてサプライチェーン全体で、地球環境の負荷の低減にも大きく貢献することができます。また、当社の技術は、省エネルギー、小型・軽量化を目指す製造業の製品開発に無くてはならないものであり、そうした製品が普及することが広く持続可能な社会の実現にもつながります。
つまり図研の事業目的自体が、サステナビリティに密接に関係したものであると認識しています。今後この「持続可能な社会の実現」という視点を経営戦略、成長戦略立案の中により明確に取り入れ、提供できる製品やソリューションの幅をさらに拡げていくことで、持続可能な未来に貢献していく企業を目指します。
エンジニアリングITのチカラで、持続可能な未来を創る企業へ
Q. 企業の将来性や成長力を「サステナビリティ(持続可能性)」の視点で評価する考え方が拡がりつつあります。図研のサステナビリティ経営に関する基本的な考え方を教えてください。
エンジニアリングITが環境課題に貢献できる領域は大きく、ビジネスチャンスである。
Q. 図研が将来の事業リスクと機会を考える上で、E(環境)、S(社会)、G(ガバナンス)の観点から、どういう課題を認識していますか。
まずE(環境)についてですが、当社自身も、社屋の照明をLED化したり、社有車をHEV化するなどCO2排出の削減に取り組んでいますが、我々のようなソフトウェア産業は、もともと環境負荷が高い業種ではないので、当社単独で環境負荷削減に貢献できる割合は大きくないかもしれません。環境課題に貢献していくためには、サプライチェーン全体で取り組んでいかなければなりません。全CO2排出量に占める製造業の割合、JEITAがまとめたデジタル5分野のCO2削減ポテンシャル(下図)を見ても、我々が提供しているエンジニアリングITが貢献できる領域は大いにあり、ビジネスチャンスでもあると考えています。
(出典:JEITAカーボンニュートラルの実現に向けてデジタル分野が貢献するCO2削減ポテンシャルと世界需要額見通し)
環境課題に関連したリスクとしては、自然災害に備え、社員の生命と安全を守り、事業の継続性を確保していくことが重要なテーマになります。当社がお客様に提供している製品やサービスは、製造業にとって最も重要な基幹業務である製品開発、製造に直結するものです。仮に災害などで当社の社屋が使えない状況になったとしても、できる限り業務に影響の出ないような仕組みをつくっていくことが重要です。災害や感染症対策として有効なリモートワークを業務効率を損なうことなく実施できるように、社内制度の整備に今後も積極的に取り組んでいきたいと考えています。
女性の採用と基幹職への積極的な登用を促進
デジタル人材の育成やリスキリングに貢献
次に社会(S)に関わる課題についてですが、労働人口の減少という課題が、当社への影響という意味ではもっとも大きいと考えています。ソフトウェアというまさに人の頭脳が源泉である商品を扱う企業としてこの問題は大きなリスクと認識しています。一方で私たちが扱うソフトウェア製品であるエンジニアリングITには、労働人口減少という課題に対処するための省力化や技術伝承・ノウハウ活用に大きな貢献ができます。製造業における労働人口減少という課題に取り組んでいくためにはDX(デジタルトランスフォーメーション)が絶対的に必要であり、そのための技術的な核となるのがエンジニアリングITだと考えています。
当社自身の人材確保、活用という意味では、まずは女性の採用と基幹職への積極的な登用を促進していきたいと考えています。採用活動が、これまで理系の人材を中心に行ってきたことにもよるのですが、現時点で女性社員は少ないです。ただし、少ないとはいえ図研にいる女性社員はそれぞれの分野で大いに活躍しています。女性が、安心して長期間働けるという点での職場環境や制度も備わっています。ダイバーシティの面からももっと女性の割合を増やし、女性基幹職を育成していきたいと考えています。
人材活用の点で、教育も非常に重要です。製造業全体に対しては当社グループがモノづくりの分野で保有するエンジニアリングITの知見を提供することによりデジタル人材の育成やリスキリングに貢献していくことができると考えています。時間や場所の制約が無く、よりアクセスしやすいようにオンラインで受講できるようなプログラムも増やしていきたいと考えています。
また、「モノづくり」を通してさまざまな社会課題を解決するための活動やプロジェクトについて、すでにいくつか参加していますが、こうした活動は今後も継続していきたいと考えています。(⇒次世代プロジェクト・エンジニア支援)社会課題というテーマを通してモノづくりに興味をもつ若い人々が増えていけば製造業全体の活性化につながっていくと考えています。もちろん図研に興味をもって入社してもらえれば一番です。
既にお話した通り、サステナビリティのビジョンは経営方針であり成長戦略そのものです。そうした戦略がマネジメントによって正しく検討され、実行されたあとその成果を検討・検証していくための仕組み、つまりG(ガバナンス)が重要であることに疑問の余地はありません。当社は、今年からプライム市場に移行しましたので、株式市場が求めるガバナンス体制の強化に取り組んでまいります。新たなコーポレートガバナンス・コードにおいては、プライム市場の企業に求められるEやSについてのさまざまな要請が含まれています。サステナビリティに関わる方針や施策を経営課題として実行・検証していくための体制を作っていきます。
サステナビリティの視点を経営戦略・事業戦略全体の中に組み込む
Q. これから図研のサステナビリティ経営ビジョンを、どういったやり方で発信していきますか。
サステナビリティという広いテーマの中で我々としてはどのようなリスクに備えていかなければいけないか、どんなことに貢献しそれをビジネスチャンスにできるか、ということを考え、それをどんなタイムラインで実行していくかということを策定していかなければいけません。様々なテーマを短期間に一気に実行できるとは考えていませんが、優先度を考えて着実に実行していきます。
繰り返しになりますが、重要なのは、サステナビリティの視点を当社の経営戦略・事業戦略全体の中に組み込み、経営陣がリーダーシップをとりながら継続的に取り組んでいく課題である、ということだと考えています。7月に発表する中期経営計画の中にサステナビリティ経営に関する取り組みも取り込んでいく予定です。また、進捗や様々な活動については、当社のホームページやしかるべき投資家情報の中で開示していきたいと考えています。多くのステークホルダーの皆様からのご意見をいただければと思います。