社長インタビュー

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コロナ禍で経験した「変化と進化」を、次の成長につなげる

2020 年は世界中で新型コロナウイルスが流行し、生活様式、働き方、あらゆる場面で変化を強いられる年となりました。
図研はこの状況をどう捉え、今後どう活動していくのかを、代表取締役社長の勝部 迅也にインタビューしました。

コロナ禍は図研の事業活動にどう影響を与えましたか

図研 代表取締役社長 勝部 迅也

いち早く在宅勤務制度を幅広く採用するなど、業務プロセスの変更に迅速に対応することができました。昨年秋には営業がお客様一人ひとりのニーズに合わせて双方向でコミュニケーションがとれる環境(ZUKEN digital)を独自に用意し運用を開始するなど、社員全員がそれぞれ工夫しながらこの状況に対応し、働き方を変えていきました。

業績への影響も予想よりも少なく、この状況を考えるとまずまずの数字が達成できました。業務プロセス変更への迅速な適応と、当社が取り扱う製品の強みによるものではないかと思います。

当社の事業は、しっかりしたお客様基盤に支えられています。リーマンショック(2008年)時には、先行きが不透明なことに加え、お客様自身が何を作れば買ってもらえるのかがわからないと縮こまってしまい、「とにかくブレーキを踏まざるを得ない」事態となっていましたが、今の状況は当時とは異なります。技術革新や開発プロセス改革などを目的とした前向きの投資意欲は、継続していると感じています。それをどのように具現化するか、図研はきちんと提案することが大事だと思っています。

私見ですが、コロナ禍によるさまざまな影響は当面続くと見ています。また例え終息したとしても、以前のような状態に戻るとは思っていません。この一年、コロナ禍において工夫をしながら新しい業務プロセスや環境を築き上げてきました。現在はその経験と新たな基盤を活かし、さらなる図研の強さにつなげるチャンスと捉えています。

今年度の取組みについて、教えてください

コロナ禍で消費者がモノを買わなくなるわけではありません。図研のお客様も、今求められる新しい製品やそれを作り出すための設計環境を整備していきたいというニーズがあるので、それぞれの市場に対して、適切なソリューションを提供し、サポートをすることで貢献していきたいと考えています。

今年度特に注力している製品は3つあります。ひとつは、一昨年から準備をしてきたモデルベース開発(MBSE、MBD)に関連した製品です。この一年、今後のさらなる展開のために必要な投資や開発を行ってきました。取り組みは順調に進んでおり、今期は着実に成果を上げていくと見ています。自動車をはじめ構想企画フェーズの重要性が今後ますます高まるのは明らかであり、ここにどう図研がITで貢献していけるかの知恵を絞っていき、多くのユーザー自身がまだ試行錯誤の段階であるモデルベース設計という新しい環境をしっかり浸透、定着させていく役目を担えるようになりたいと考えています。

2つ目は、図研の主力製品でもあるCRです。開発環境の刷新という、より大きなスコープの中では単にCAD to CADの機能比較で販売するのではなく、お客様のニーズをリサーチしてそれに対応した価値の提案をする必要があります。解析環境との連携のし易さや、PLM、3DメカニカルCADとの連携、クラウド環境との親和性、リモートワークの快適性などの点でCR-8000のパフォーマンスは、今改めて評価されています。今後、CR-8000に移行するというニーズが活発化していくと思います。今年度はMBSEとの連携やAIを取り入れた使いやすいシステムなどの付加価値がついた、CR-8000のポテンシャルを再認識してもらう活動を行います。

3つ目は、今年度オートモーティブ市場に投入するE3.infiniteです。この製品は日独の開発チームの連携という意味でも図研にとっては大きなチャレンジでしたが、結果として大変良いソリューションができました。単なる旧製品からの機能向上ではなく、オートモーティブという、モノづくりの中でも最も技術革新が進行している領域に求められる新しいエンジニアリングプロセスに対応した機能が実装されています。E3.infiniteによってワイヤハーネス設計・製造の効率化という視点だけではなく、100年に一度といわれるこれからの新しいモビリティに相応しいE/E設計に貢献していきます。

今後の経営方針について

「図研の持つ技術や経験を通してより良い社会を実現するためのモノづくりに貢献していきたい」

以前より指針として掲げていることですが、まずは「真の」グローバルカンパニーを目指します。今更と思われるかもしれませんが、社内にはまだ、日本が親会社で海外が支社だという考えの人もいます。それでは、真のグローバルカンパニーといえません。開発だけではなく、経営方針そのものについても欧米・アジアの拠点と連携し、全社員が世界市場を視野に活動できる人材になってもらいたいと考えています。

また、企業はより一層、ESG(環境・社会・ガバナンス)などの非財務的な視点でも評価される時代になります。図研は今まで堅持してきた健全な企業文化を経営の根幹として保持しながら、社外のステークホルダーの皆さんの意見ももっと取り入れて、さまざまな改善を行っていきたいと考えています。改善すべき課題のひとつとして、例えば基幹職として活躍できる女性の割合をもっと増やしていくことも重要です。

お客様である製造業は、脱炭素社会の実現に向けてもさまざまな課題に直面しています。図研の事業自体は環境負荷が高いものではないので、正直これまで関心の高いテーマではありませんでした。しかし、当たり前のことですが、図研が貢献すべきお客様や社会全体の課題は、図研自身の課題でもあります。図研の持つ技術や経験を通してより良い社会を実現するためのモノづくりに貢献していきたいと考えています。この数年で図研グループの提供するソリューションの幅は随分広がりました。設計や製造といったエンジニアリングの視点で、脱炭素社会に貢献するソリューションの提案もできると思っています。
モノづくり企業の頼れるパートナーとして成長を続ける図研にご期待ください。

 

株式会社図研 代表取締役社長
 勝部 迅也