Club-Z劇場
新人岡田君のちょいモテ設計者への道
【第10回】回路分割 ~一筋縄ではいかないんだなぁ~
2009.01.29
「ここでは、性能をきちんと出すために信号の流れがスムーズになるよう配置する、デジタル回路とアナログ回路の距離はできるだけ離す、などの電気的性能への配慮や、高速回路の性能を出すためには高速回路部分よりも低速回路部分で分割した方がよい、といったEMCに強い配置を考慮することが重要である。ただ、これらはいろいろなケースが考えられるので、何がベストなのかの判断が必要で、まさに経験がものを言う領域なんだ。
ここは、岡田も最近いろいろ勉強した領域だから多少は想像がつくだろ?」
「はい・・・SIやEMCでは痛い目にあったばかりなので、とっても分かりやすいです・・・」
「なんだそれ?」
怪訝そうな顔をする品川さん。
「あっ・・・気にしないで下さい。。。」
「そうか。まぁ、いいや。っで、最後がコストへの配慮だ。」
「もちろん、信号の流れがスムーズになるように配置すれば、結果的に基板間をまたぐ配線本数も削減できる、というケースも存在する。が、コスト重視で層数を減らすとEMC的にも問題が出やすくなる。今回の設計なんか、デザイン重視で筐体が小さくなっているにも関わらず、盛り込まれる要求は増え・・・まぁ、よくある話なんだけどな!あっちを立てれば、こっちが立たない!相反する条件の中で俺は翻弄されてるって訳だ!」
オレの周りをグルグル回りながら熱弁する品川さん。
「でも、どこかで最適な案を導きだす必要がある!」
そして、オレを指差し何故か決めゼリフ!
「【複数基板への分割】というフェーズで、最も重要なことは、構造的制約条件をベースに、このような性能・コスト面を配慮し、様々な条件を考慮しながら検討していく、ということだ。もちろん、どう配置してみても、機構設計からおりてきた構造条件では部品が配置できない!という事態が起きた場合は、時には機構設計者との擦り合わせを行うことも必要になる。
いかに早い段階で、このジャッジが出来るかも大事なことだから、気付いたら即、擦り合わせだ。
少し話がずれたが、とにかく、この分割方法というか、機能ブロックの位置を決める作業がかなり難しい。俺のように豊富な経験と高いスキルがあっても、簡単には決められないくらい難しいんだ。うんうん。」
(はいはい。笑)
「何故なら答えは一つではないからだ。パターンはいくつか存在する。だから、複数のパターンを作って、何が一番適切か検討しなければならない。ここで、レビューが出てくる、という訳だ。」
「レビューですか?」
「そうだ。候補となるパターンは、プロジェクトリーダーである私がいくつか作るが、その中からどれがベストなのかを決めるために、各担当者を交えてディスカッションしたいと思っている。みんなの知恵と情報を交えた方が、よりベストなパターンを選べるだろ?本来なら岡田は、プロダクトZのレビュー時に参加するのがベストだったんだが、まだ経験的に無理があったからな。っで、今回は経験・タイミング的にもちょうど良かったので、参加してもらおう、ということになった訳だ。」
「そういうことだったんですね!ところで、、、候補となるパターンはどうやって作るんですか・・・?検討しなくてはいけない条件が多すぎて、なんだかとても大変そうなんですけど・・・」