Club-Z劇場
新人岡田君のちょいモテ設計者への道
【第10回】回路分割 ~一筋縄ではいかないんだなぁ~
2009.01.29
「突然呼び出して悪かったな~。岡田の教育を頼まれちまったもので。」
「はぁ・・・」
「俺が次の新製品のプロジェクトリーダーになったのは知ってるよな?」
「はい、もちろんです!品川さんならいつ選ばれてもおかしくない、って思ってましたよ!」
にやっと笑う、品川さん。
「そうだろ~。むしろ遅いくらいだぜ。土田さんも俺のことを温存しすぎだよな~。」
「はぁ・・・」
「まぁ、確かにこの若さで新製品のプロジェクトリーダーって言うのは前代未聞だが、この俺を信じてだ、 」
「・・・あの・・・話が脱線しそうなんですけど・・・」
「おおーっ。悪い、悪い。」
こうやって、すぐに調子に乗ってしまうのが先輩の悪いクセである。
「今、新製品の各種構想検討を実施しているところなんだが、その中で今度、複数基板に対する回路分割のレビューを行うことになっている。要は、今回の製品で実現する各機能ブロックを、どの基板のどの辺りに実装するかを検討する工程だ。製品は一枚の基板でできてるわけではないからな。っで、明後日、そのレビューを関係者や有識者を交えて行うのだが、そこに岡田も参加して欲しいと思っている。」
「えっ?!僕もですか?!」
「お前も色々なこと、経験してきただろ?特にここ数日でお前が勉強したことが生かされるところでもあるんだ。だから、将来のため、岡田の頭の中の情報が新鮮なこのタイミングに教えておこう、ってことになったんだ。」
「そうだったんですか。」
また、土田さんの無茶ぶりかと思ってたよ・・・ごめんなさい。
「今、岡田が担当しているプロダクトZは、前モデルの流用が大半だから、ある程度こういった検討は比較的簡単に済まされているはずだ。しかし、大なり小なり、こういった検討は詳細の回路を書く前に検討されているんだ。
ちなみに、今回俺が担当している製品は、デザイン重視だから筐体もその中の基板外形も大きく変更になっている。今回のレビューはかなり大変になると思う。
でも、ここでシッカリと漏れなく検討しておかないと、後工程での変更が多発したりと影響範囲が大きい。そういった意味でも重要な工程なんだ。」
真剣な表情の品川さん。
「ところで、これらの検討時に考慮しなければならないポイントって分かるか?」
「えっと・・・」
「主な項目は、この3つだ。」
考える間もなく、資料を渡される。
- 構造
- 構造的制約条件への適合←機構設計より
- 性能
- 電気的性能(SI含む)
- EMC(EMI/EMS)
- コスト
- プリント基板のコスト
- 部品のコスト
- 実装のしやすさ(実装コスト)
「まずは、構造的制約条件への適合作業だ。」
「は、はい!」
「構造的制約条件が決定すると、基板外形や位置指定部品の位置(例えば基板間を繋ぐコネクタの位置や、映像出力などのジャックの位置)や高さ制限など、必然的に決まってくるものが出てくる。これらの条件や位置を考慮しながら、今回の製品で実現する機能(回路)を、どの基板のどの辺りに置けばよいかを検討する作業だ。」
「へぇ~。こんな制限があるんですね。」
「当たり前だ。空いてるところに好きに配置すればいいってものではないんだぞ。
そして、各基板へ分割した後、どの設計を誰に任せるか、その的確な指示も重要になってくる。難易度の高い設計はスキルの高いメンバーへ任せ、各メンバーの設計完了時期がずれないように考慮しなければならない、という訳だ。」
「そんなことまで考えるんですね!」
「プロジェクトリーダーは常に全体を見ていなくてはいけないからな。そして次は性能への配慮だ。」