Club-特集:実装軽視に物申す!

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更新日 2016-01-20 | 作成日 2007-12-03

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実装軽視に物申す!

第3回:JISSOでもう一度日本が勝つ道 キーワードは「3D」と「規格化」

福岡大学 工学部 電子情報工学科教授・工学博士
友景 肇


2011.09.29

前回、福岡県に三次元半導体研究センターが完成し、部品内蔵基板を中心とした3次元実装技術開発の場が出来たことを紹介した。では、3次元実装の設計は、どのようにすべきなのか。


■SiP開発の救命救急病棟(ER)モデル

まず、短期間に設計から製造までを行う方法は何かを考えてみる。SiPを短時間で製造するための方法は、救急医療で患者の命を救うための緊急医療に例えることができる。これをSiP製造のER(emergency room)モデルと名付けた。図1は、救急患者の命を救うための救急医療の流れである。担当医は、患者が搬送されてくる前に、患者の様態を救急車から受け、処方箋を作る。次に、レントゲン技師、麻酔医、外科医などに指示して、事前に受入れ準備を整え終えておく。そして、患者が運び込まれると、一気にオペレーションが開始される。

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図1 救命救急医療(ER)の流れ


図2は、SiP製造のERモデルである。担当医に当たるSiP基本設計者は、フロアプランから基本設計を行なう。このデータを使って、回路設計、構造設計、工程設計を行い、シミュレータを用いて事前にシミュレーションを終え、待ち状態にしておく。量産基板やダイが供給されると、一気に製造に移り、試作の繰り返しなしに量産工程へ進む。工程間の待ち時間がないため、最短での量産が可能となる。従来は、それぞれの設計がシーケンシャルに行なわれ、前段の設計が終ると、その設計データを使って次の設計に移り、装置の条件出しなどの工程設計を経て量産工程へと移っていた。各設計を並行して行なうためには、基本設計からシミュレーションを行なうまでのデータフォーマットの共通化が必要となる。図形データのみならず、それぞれのシミュレータの出力の形式も共通化されることが必要で、これは、患者のカルテをどの医師も閲覧できることに対応する。

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図2 SiPを短期間に製造するためのERモデル


個々のシミュレータで得られた値が最終的にある範囲の中に納まるためには、個別に最適化を行なっていく必要がある。図3(a)は、この従来の設計モデルを表している。EDAツールで設計されたデータは個々のシミュレータ入力のためにリメッシュされ、シミュレーション後結果が表示される。一部のシミュレータは、実装装置へデータを送り、シミュレーションと同じ工程を実現できる。例えば、ダイの位置が変更されると、その後の電磁界シミュレーションや熱シミュレーションをやり直す必要があり、全てのシミュレーションを終えるのに要する時間は個々のシミュレーションに要する時間の和となる。図3(b)は、統合設計モデルで、各シミュレータからの出力を総合判定してツールにフィードバックする機能を表している。


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図3 個々のシミュレータでの設計(a)と統合設計(b)


次に、これまで文部科学省のクラスター事業で開発してきたSiP設計ツールについて以下に説明する。


■3次元SiP設計ツール開発
文部科学省のクラスター事業では、3次元構造の高周波SiPを設計するための統合設計機能を有し、フロアプランからの自動配線、3次元可視化、ワイヤボンディングの最適配線、温度分布を均一にするための自動配置などができる3次元SiP設計ツールを開発した。電磁界解析のHFSS(High Frequency Structure Simulator)、MWS(Microwave Studio)、ADS (Advanced Design System)、熱解析のIcepakなどとインターフェースを持ち、全体または一部を切り出してシミュレーションすることができる。また、クラスター事業のII期では、MEMSデバイスを含むSiPを設計するためのツールも開発しており、現在Ver.4.0が完成している。これは、応力解析にADVENTURE Clusterを用い、統合設計が可能である。

しかし、今後より多くの設計者が3次元SiP設計を開発していくためには既存のEDAを活用できることが必須である。上記3次元SiP設計ツール開発の取り組みノウハウを既存EDAに注入し、エンハンスしていかなければならない。特に図研のEDAは基板設計の現場で最も使われており、その環境下で3次元SiP設計が容易に実現できることは日本の実装関連企業の増強に繋がる。
ただその際に考えなければいけないことは、共有化できるデータフォーマットである。そこでFUJIKOの誕生となる。