コラム
グローバル化は設計・製造の仕組みを見直すチャンス
【第23回】マトリクス体制での品質保証
株式会社RDPi 代表取締役 石橋 良造
2009.06.23
それでは図65 の右側は何をあらわしているのでしょうか?
これは、プロジェクト品質計画によってバラツキが減少した品質指標を全体的に向上させた状態、すなわち、品質レベルの平均値が高くなっていることを示しています。そして、このための仕組みが組織品質計画です。
これまで説明してきたのは、プロジェクトごとに作成する品質計画(プロジェクト品質計画)、図64のマトリクス体制では縦軸で作成する品質計画ですが、組織品質計画は、横軸の技術領域(職能)軸で作成する品質計画です。技術領域軸は、技術領域ごとにプロジェクトを横断した組織ですから、そのマネジャー(グループマネジャー; GM)の役割は、個々のプロジェクトではなくすべてのプロジェクトでバランスよく自分のグループメンバーのパフォーマンスを最大化することであり(全体最適)、そのために中期的にグループメンバーのスキルアップやレベルアップを行うことになります。
組織品質計画も、このようなグループマネジャーの役割に合わせた内容になります。つまり、グループでの中長期的な品質レベルを向上するための計画です。したがって、中長期的に品質レベルを上げるためのチャレンジをすること、その結果として、個々のプロジェクトでのメンバーのパフォーマンスを継続的に向上させるような計画になっている必要があります。現状維持ではなく品質レベルを上げるための挑戦的な計画だということです。このような計画にするためには、グループごとに現状を分析して共通課題を明らかにし、その課題を解決するための手法・技法の導入や根本原因に迫る作業改善を行う必要があります。従来と同じようなことを実施するだけの計画ではダメです。
組織品質計画はこのような目的、位置づけのものですから、記述する内容は以下のようなものになります。実施する対策ごとに次に示す項目を具体的に記述します。
課題
この対策で解決する現状の課題。現状の定量的な分析も含めて記述する。
目標
この対策で達成すること。目標達成を何で(どのような指標で)測定するのかと達成すべきその数値目標を記述する。
実施内容
この対策で実施する手法や技法の説明。現状の延長ではないレベルアップを実現するために、どのようなアプローチ(方法)をとるのかを記述する。
実施手順
前述の実施内容をどのような手順で実施するのかの説明。実施にはどのようなステップが必要なのかということ、そして、ステップごとのオーナー(責任者)と実施期限を記述する。
実施対象
ほとんどの場合、対策の適用先は実際のプロジェクトになる。したがって、この対策をどのプロジェクトに対して適用するのかを記述する。
進捗確認方法
対策実施の状況をどのような方法で確認するのかの説明。進捗確認のための管理指標を明確にして、四半期ごとなど適切な期間ごとにその管理指標値の目標値(マイルストーン)を記述する。
実施スケジュール
前述の実施手順、実施対象、進捗確認のための管理指標とその値などを、ひとつのスケジュール上で把握できるようにしたもの。