Club-Zコラム第11回

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更新日 2016-01-20 | 作成日 2007-12-03

コラム


グローバル化は設計・製造の仕組みを見直すチャンス

【第11回】リスク管理とは目標達成までのシナリオ作成

株式会社RDPi  代表取締役 石橋 良造


2008.06.19

前述の B リスクに対して予防策とコンティンジェンシープランを計画する作業は、今回のテーマであるプロジェクト・シナリオに強く関係しますから、もう少し解説しておきます。

予防策を検討するときには次のようなことに注意する必要があります。

  • 何をするのかを具体的に記述する。「常に状況を把握する」「定期的に報告を受ける」というような抽象的なアクションではなく、リスクを発生させないためにできることや、リスク発生に備えてやっておくことを具体的に記述する。たとえば、「○○の測定値に対する目標値とその実績を毎週報告させる」「毎週、目標達成できない場合は××部長とのレビュー会議を開催する」など。
  • 予防策を実施する期間、期限を明確にする。リスクが顕在化する時期を明確にすることは困難だが、リスク対応の期限を明確にして、その期限までに変化がなければリスクが顕在化したと考えて対応をとった方が良い場合が多い。判断を引き延ばすことがないように期限を設定する。
  • 複数の予防策を検討する。リスクは発生しないのであればそれに越したことはない。重大なリスクほど、顕在化したときは多大な手戻り作業が発生することになるため、できるだけ多くの予防策を実施できるようにしておく。


コンティンジェンシープランについても注意事項を書いておきましょう。

  • 何をするのかを具体的に記述する。「○○についての仕様変更」「次の試作で対応」というような抽象的なアクションではなく、「○○についての測定結果をもとに出力電流優先と安定時間優先の選択を行う。そのための基礎データを事前に収集・整理しておく。」というように、具体的な記述にする。
  • 実施する期限を明確にする。コンティンジェンシープランはリスク発生後に行うアクションだが、その実施には期限(有効期間)が存在する場合がある。たとえば、追加の試作をコンティンジェンシープランとするときでも、1ヶ月しかリリースを遅らせることができない場合がある。このような場合は追加試作のためのアクションは期限を意識したものになる。
  • 予防策が実施できない場合の対応を検討する。予防策が実施できない状況に陥った場合、追加の対策を実施する必要がある。このような追加対策もコンティンジェンシープランとして記述しておく。ちなみに、予防策が実施できない状況に陥った場合、コンティンジェンシープランを前倒しで実施した方が手戻りを必要最小限に抑えることが多い。
  • 予防策が機能しない場合の対応を検討する。予防策がリスクの発生を抑制する効果がほとんどないことがわかったときに、どのようなアクションをとるのかを決めておく。予防策を形式的に実施するだけになる状況を避けるためである。
  • 複数の視点で対応を検討する。品質、費用、リソース、納期などはもちろん、コミュニケーション方法や根回し方法など様々な視点からコンティンジェンシープランを検討することが重要である。リスクが顕在化したときには次々と対応をとる必要があることが多く、対応方法の選択肢を数多く持っていることは安心につながる。


このように説明すると、予防策とコンティンジェンシープランを考えるのは面倒なものになってしまうかもしれません。しかし、ここでしっかりと頭を使っていれば、プロジェクトが始まった後で何が起こっても冷静に対応できるようになります。がんばりましょう。