Club-Zコラム第15回

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更新日 2016-01-20 | 作成日 2007-12-03

コラム


同時にやるシクミづくりとヒトづくり。
やっと気づいた改革の本質

【第15回】エネルギー源は「自分軸」

株式会社RDPi  代表取締役 石橋 良造

2011.11.24

内発的動機づけのエネルギー源「自分軸」



前回(「根源的な質問に答えてわかる『目的』LinkIcon」 )で内発的動機づけについては終わる予定でしたが、予定を変更して「自分軸」についてもう少し解説したいと思います。内発的動機づけには「自律性」「熟達」「目的」という3つの要素がかかわっているとことを解説してきましたが、内発的動機づけのエネルギー源となるのが「目的」であり、「目的」を明らかにするためには「自分軸」を知ることが大切だからです。

ところで、内発的動機づけが大切な理由は覚えていますか? 今の時代、技術者はもちろんのこと、多くの人が抱えている課題は、解決までの手順や道のりが明らかな「アルゴリズム」的な問題ではなく、発見や創造性を必要とする「ヒューリスティック」な問題がほとんどであること、そして、ヒューリスティックな問題に対しては報酬や罰によってやる気を起こさせる外発的動機づけは効果がなく、個人の内面から湧き出てくる内発的動機づけがモチベーションになることをお伝えしてきました(「やる気の素、自律性LinkIcon」を参照のこと)。

今回、「自分軸」を把握する過程について事例を紹介し、「自分軸」が内発的動機づけの力を生むことをしっかりと理解していただく機会にしたいと思っています。

変わるための5ステップ


事例の紹介に入る前に、モチベーションによって行動が変わることについて少し解説しておきたいと思います。

見過ごしていませんか? 開発現場における本当のリスクLinkIcon」でも書きましたが、私は長年、開発や設計の仕組み作りのコンサルティングをやってきて、本当に高いパフォーマンスを出すためには、組織における仕組み作りだけでなく、個人のモチベーションを上げることが必要不可欠だということに気づきました。当たり前のことなのですが、組織と個人の両方に対して働きかけることが大切です。次の図は両方の大切さを表現したものです。

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この図が示すように、土台は個人の意識であり、「個人の意識」を変えるのが「やる気」、すなわち、モチベーションです。ただ、冒頭に書いたように、内発的動機づけは一人ひとりの内面から湧き出るものであるため個別対応が必要であり、階段を上るように一段ずつ状態を変えて進めることが大切です。そのステップを次のように考えています。

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各ステップを簡単に説明しておきましょう。最初のステップは現状把握です。設計など、組織として実施している業務について、かかわっているメンバーのモチベーションも合わせてどのような状況にあるのかをまず把握します。組織、および、個人の現状を「知る」ということです。モチベーション・アセスメントと呼んでいます。

モチベーション・アセスメントの次に実施するのが、一人ひとりにフォーカスしたモチベーション向上の取り組みです。まず「自分軸」に気づくことです。これは、自分にとって何が大切なのか、何を忘れていたのかが「わかる」ということです。「自分軸」に気づくことで気持ちや考え方に変化が生まれます。

「わかる」の次の段階は、気持ちや考え方の変化をもとに行動に起こす気になること、すなわち、今までとは違うことを「やってみる」気持ちになるということです。頭で気づいたことを、実際に行動してみようと決意する段階です。

その次が、実際にやってみることで、今までとは違うことができたという達成感や、やったことによって周りの人や状況が変わったという満足感を得ることができます。それが、変わることへの確信や自分軸に対する確認を生みます。行動を起こすことによって、自分は「できる」という自信が生まれます。

この「気づき」「決意」「行動」の3つを支援することをモチベーション・コーチングと呼んでいます。

そして最後の段階が、意識して行っている行動を、無意識でも実行している状態、つまり習慣化するということです。ここまできてやっと、気づきにもとづいた行動を完全に自分のものにすることができます。習慣として「している」という状態です。

個人の意識がかわるとは、内発的動機づけにもとづいて個人の行動が変わるということです。そのためには、この5段階をひとつずつ登っていく必要があり、それをモチベーション・コンサルティングという形でお手伝いしているのですが、その中で「自分軸」に気づいた技術者を紹介したいと思います。