☑コストリダクションプログラム
4.ノウハウ活用
2011.01.20
(Ⅰ)ノウハウを「ためて整理する」
設計業務の中で発生した課題、対策、注意点、他の設計者とのやりとりなどをノウハウとして自動的にためる仕組みです。図研の持つ「設計中に発生したノウハウを自動的にプロセスに関連づけて蓄積可能なツール」を用いて、課題に対し実際に行った対策や他部署とのメールの記録、参考にしたドキュメントなどを、意識することなくノウハウDBにためることが可能となります。
そしてたまったノウハウを活用しやすくするために、活用シーンやキーワードごとに振り分ける仕組みも自動化されています。ノウハウをただ蓄積しても、メンテナンスを怠るとただの文言集になってしまいますが、図研のツールを用いて自動的にためた場合は、体系的な分類や、ノウハウ同士の関連性やあいまい度の明確化などにより、常に最新かつ「使える」状態にしておくことができます。
(Ⅱ)ノウハウを自動的に「活用する」
設計をするにあたり、適材適所で必要なノウハウや、使用するツールなどが自動的に抽出される仕組みです。(Ⅰ)で触れた「設計プロセス管理ツール」により、各設計プロセスで利用するツールの起動や、過去の類似プロセスで発生した課題および実施した対策の自動抽出などが可能となります。設計者はノウハウを「探す」ことなく活用できるのです。
こうして2つのアクションを設計のプロセスに「埋め込む」ことにより、設計者が意識することなくノウハウを活用できるような環境を構築した後で、さらにもう1つのアクションを適応させることで、より理想的なノウハウ活用環境に近づくことができると考えます。
(Ⅲ)ノウハウを高いレベルで循環させる
「新しい製品を開発する」場合でも、大概は過去の類似製品や同シリーズ製品から設計データなどを流用します。「流用設計」というと、過去の設計データの流用を指すことが多いのですが、流用可能なのはそれだけではありません。先述の「設計プロセス管理ツール」は、過去の成功プロセスをテンプレートとして管理することが可能なのです。テンプレートには、各プロセスに必要とされる設計データ、ノウハウ、関連ドキュメントなど、流用する際に有益な情報を関連づけておくことも可能です。
さらに、その「流用設計」の途上で多くの新しいノウハウが蓄積され、テンプレートプロセスにフィードバックすることが可能となっています。つまり、プロセスを実施すればするほど、管理しているノウハウやプロセス自体の鮮度は向上し、理想の設計環境に近づくことができるのです。設計作業中にノウハウを自動的に活用すること、また同時に、各プロセスの実績を自動的にエビデンスとして残すことが可能であれば、もはやこれまでのようなDRは必要なくなるかもしれません。
現在図研では、このような設計環境を目指した取り組みを行っており、まだ始まったばかりではありますが、着実に理想の設計環境に向けて前進しています。
4 最後に
今回ノウハウ活用というテーマから最後にもう1つ触れておきたいのが「人財流出」のリスクについてです。
どの設計現場にも共通して言えるのは、ノウハウの多くが特定の人間に集まりがちであるということです。昨今日本のエレクトロニクスメーカの技術者が海外、特に成長著しい新興国の企業に引き抜かれるケースが多くなっています。ノウハウの蓄積と活用をおろそかにしていた企業にとって、「エース級設計者」の損失は同時に貴重な「ノウハウ」の消失でもあります。漏洩(ノウハウそのものは自社にも残る)ではなく、なくなってしまう(消失)わけですから尚一層損失は甚大です。
社員の技術力の向上に力を入れている企業は数多くあります。しかしながら、社員の技術力を属人的なものにせず企業としての技術力として「蓄積」していくことに力を入れている企業は少ないのではないでしょうか。一人の優秀な技術者を育てるのにどれぐらいの費用がかかるか、どれくらいの時間がかかるか、ということを考えれば、ノウハウをいかに扱うかということの重要性は自明であると思います。
以上でノウハウ活用の重要性、そして多くの企業が、その重要性にも関わらずノウハウ活用環境の整備に取り組めておらず、それによる重大なコストリスクを孕んでいることを、再認識していただけたかと思います。