ノウハウ活用編

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更新日 2016-01-20 | 作成日 2007-12-03


☑コストリダクションプログラム

4.ノウハウ活用

2011.01.20

1 持続的な競争力につながるコストダウンを実現するために

血の滲むような努力で実現した原価低減も、厳しい市場環境は1年、ともすれば数ヶ月の猶予もくれないかもしれません。また、ODMやEMSを活用することが一般化してきた現在、設計そのもので実現可能なコストダウンの余地は限られたものになりつつあります。業界規模のダイナミックな変化は企業の設計環境にも大きな影響を与えており、これまでのやり方では根本的な競争力の強化は望めないと言わざるを得ません。

こうした状況の中で、設計部門の皆さんには、あらためて自社の持つノウハウ活用の重要性について戦略的に理解していただきたいと考えています。設計部門にとって製品価値の向上とコストダウンは表裏一体の課題ですが、ノウハウの蓄積と徹底的な活用はそのどちらにも重要な、そして持続的な効果をもたらすからです。しかも簡単に他社に追随できない競争力になります。

しかし、ノウハウの活用を実現するのは、それほど簡単ではないことを、既に皆さんも良くご存知だと思います。今回、私たち図研とともにこのテーマに取り組んでこられた様々なお客様の事例にもとづき、実現を妨げる原因を分析し、どうすればそれを定着させ、コストダウンにつなげていくことができるかについてご紹介したいと思います。


2 なぜノウハウ活用は失敗するのか : ”STAGE0”の残念な例

お気づきの方も多いかと思いますが、「ノウハウ活用」というテーマは決して目新しいものではありません。「設計ミス事例をデータベースで管理しよう」、「エース級設計者のノウハウを蓄積しよう」といった試みは、ほとんどの企業が一度は取り組んだ経験があるはずです。しかしながら、ノウハウを適切に活用できている例は少ないのが実情です。

ここでノウハウ活用の失敗例として、図研エンジニアが目の当りにした「ノウハウ管理」の取り組み失敗例をご紹介します。

【A社事例】トラブル事例(過去に直面した問題と対策案)を社内イントラで閲覧できるように整備したが、次第に使われなくなってしまった

ノウハウやトラブル事例を社内イントラで管理する企業は数多くあります。ノウハウやトラブル事例を管理するデータベースが存在し、社内イントラでの登録および閲覧を可能とする運用です。また、社内イントラではなくても、部門毎のチェックリストやノウハウ集をExcelやNOTESなどで管理している設計部署は多く存在します。しかしながら、このような運用はほとんどの場合、形骸化してしまっています。その原因を分析してみると、大抵次のような理由によるものです。

  1. チェックリストを一度作成した後、メンテナンスがされていない
  2. 時間に追われ、情報を格納すること自体が徹底されていない
  3. ためることが義務付けられていても、ためたノウハウがうまく整理・分類できていないので不要な情報、重複した情報、誤った情報が散在し、情報を探しづらいデータベースとなってしまっている
  4. トラブル事例を検索しても、それらの背景がわからず、自分が直面している状況に合致する事例かどうか判断できない


当然ですが、ノウハウを「活用する」ためには、まずノウハウを漏れなく確実に「ためる」必要があります。そして必要なときにそれをすぐ活用できるように「整理」しておかなければなりません。

ここで大事なのは、ノウハウをためることや整理することが設計者の負荷となってしまうと、これらは目の前の設計業務に直接つながらない作業なのでどうしてもおろそかになってしまうということです。データベースが不十分で、使いづらいものであれば使われなくなり、使われないデータベースのために誰も一生懸命ノウハウを登録し、整理することもなくなるという悪循環で、結局はまったく使われなくなります。


【B社事例】デザインレビューを関所として設定しているが、有用な場として機能していない

A社のようにノウハウ活用をシステム化しなくとも、ほとんどの企業において行われているデザインレビュー(DR)はノウハウの共有や活用の場としても本来有効なはずですが、DRが本来の目的を果たしていないケースもまた数多くあります。それには以下のような理由が挙げられます。

  1. 出席すべき有識者が業務多忙のため参加できないまま進められてしまう
  2. 必要な書類を集めることに時間をとられている
  3. 期日を守ることを順守するため、後工程を先に着手し、後で帳尻合わせを行っている


つまり、DRが本来の目的を果たさず、形骸化しているといえます。
これも日々の設計作業の中でDRが設計者への負荷となってしまい、結果として手段が目的化され、おざなりな内容になってしまったということになります。

「ノウハウをためる、整理する」という号令がかかった際には、社内ワーキンググループなどが発足し、有識者が集まってノウハウ整備が行われるものの、継続的な活動に至らずにその場限りとなってしまうような失敗事例には、多かれ少なかれ上で述べたような背景がありました。

図研は、ノウハウを「ためて整理する」、「活用する」という2つのアクションをできるだけ設計者の負担にならないように設計業務の中に自然と埋め込み、循環させることがノウハウ活用を成功させるポイントだと考えています。