基板と熱設計

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更新日 2016-01-20 | 作成日 2007-12-03


☑基板と熱設計

3.熱設計の意味

株式会社ジィーサス

2010.09.30

こんにちは。株式会社ジィーサスの藤田です。
今回も熱設計について記述したいと思いますが、今回は熱設計だけでなく、製品設計全体の中で熱設計がどのような意味を持っているのかを考えてみたいと思います。

一般に製品設計において考慮すべき項目は何でしょうか?

私は熱設計教育等の中では「安全性・品質・信頼性」の3項目を強調していますが、それ以外に「Q(品質)・C(コスト)・D(納期)」という3要素もあります。「QCD」のうちの「Q」の中身が「安全性・品質・信頼性」の3項目なのですが、製品である以上「C、D」も「Q」と同様に重要な要素です。
品質を確保するためにコストと納期をふんだんに使ってしまえば、たとえ良い物でも商業的に成功しません。本来なら「C、D」を無視して究極の品質を突き詰めたあと、「C、D」を考えながら品質をコントロールできればいいのですが、現実にはそんな余裕もなく、走りながら必死で「Q・C・D」のバランスを何とか保っている、というのが設計現場の現状ではないでしょうか?

このような状況の中で、いままで熱設計しなくても何とか設計できていたのに「これからは熱も考えて設計しなさい」と急に言われても、余裕もないしどうやっていいのかもわからないと思います。

th_100930_1.JPG熱設計もそうですが、そもそも設計とは「目的を達成することを具体化する作業」のはずで、「具体化する作業」は「こんなものが世の中にあると便利だな」と考えるところから、製品がユーザ先で安定して稼働するまでの全てだと思います。

しかし一般には形を考えたり機能を考えたりする作業(構想設計)と、それを工場で具体的に作れるように図面化するまでの作業(具体設計)を「設計」と呼んでいることが多いと思います。また「目的を達成すること」の中には必要機能のほかに「いつまで?いくらで?」という項目が当然に入っています。

これをまとめると「Q・C・D」となるのですが、設計作業を難しくしているのは「なにを?いつまでに?いくらで?」の条件を決める作業と、その後に具体的に条件を形にする作業がごちゃごちゃになってしまうからだと思っています。

これがたとえば「風速2m/sで周囲温度40℃の条件で、2Wの発熱を熱抵抗1℃/W以下で放熱できるヒートシンクを、金型代50万円以内、1000個/ロットの原価を100円以内で2週間以内に設計のこと」というように設計条件が具体化しておけば、ヒートシンクの設計方法を知っていればすぐにでも設計が可能で、しかも納期やコスト分析も同時にできるのではないでしょうか?

「なにを?いつまでに?いくらで?」を具体化したものが「設計条件」ですが、この設計条件を如何に明確化するのかが、その後の作業をスムースに行えるかどうかのカギになるはずです。このために私は、製品設計を効率よく進める要素は「Q・C・D・設計条件」の4要素だと考えています。
特に設計条件の具体化が重要だと思っていますが、これに時間がかかりすぎて、その後の作業を圧迫するのも本末転倒なので、なるべく短時間に効率よく製品仕様から設計条件を作り出すことを真剣に検討する必要があると思っていますし、その考え方で効率良い設計システムを構築すべきだと思っています。

では具体的に熱とQCDはどのような関係にあるのでしょうか?