Club-Z機能解説:Lightning編

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更新日 2016-01-20 | 作成日 2007-12-03

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図研ベテランSEによる知って得する機能解説
-電源およびグランドパターン設計の妥当性を検証する-

2012.08.30


■はじめに
 回路基板設計に関する最近のトレンドとして、「IC部品の低電圧化」「回路の多電源化」「EMC対策強化」というものがあり、電源パターンはベタ面設計をすることが少なくなってきました。このため、一般信号ラインと同様に、電源やグランドパターンは、配線の引き回し方、パターン幅などの設計に注意を払う必要が出てきました。設計次第では、プリント基板の品質問題が後工程で発見されることがあるからです。
今回は、品質向上やロスコスト削減のため、CADデータ上で、電源およびグランドパターン設計の妥当性を検証することが出来る機能を紹介します。



■問題点
 通常、プリント基板上のIC部品には、電源供給をしますが、電源の供給源であるDC-DCコンバータICやレギュレータICから電源パターンを消費先のICまで引き回します。供給源の電力がそのままロスせずに伝達出来れば理想ですが、現実は、そういうわけにはいきません。以下のような問題が発生することがあります。

  • 電力のロスにより、ICに必要な電源電圧が供給出来なくなる
  • 一部の配線パターンに電流が集中し、意図しないパターンの発熱が起こる
  • マイクロプロセッサーなどICの動作周波数が低下してしまう

これらの問題が発生すると、どうしても設計の手戻りが起こってしまいます。問題が発生する前に、手を打っておきたいので、これらの問題の原因となる配線パターン設計の事例(模式図)を見ていきましょう。(図.1)

まず、電源の供給源から電源パターンを経て、消費先へ接続されています。また、消費先からグランドパターンを経て供給源へ接続されています。これはちょうど、乾電池と豆電球のような関係ですね。電流が回路を一周します。
この事例では、ボトルネックとなりうる点が3箇所あります。まず、電源パターン側に細くなっているパターンがあります。また、配線層をまたぐビア径が小さく、個数も少ないです。そして、グランドパターン側は、内層のクリアランスランドによって、一部パターン幅が細くなっています。これらは何れも、電流集中による電圧降下を招きます。電圧降下は、IRドロップとも言います。

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(図.1)配線パターン設計の事例(模式図)


  • ○IRドロップについて
  •  V=IRという式で表される「オームの法則」は、ご存知かと思いますが、IRドロ ップとは、この法則と同じ意味で考えていただければ結構です。Rというのは 抵抗値のことですが、配線パターンは微小な直流抵抗値を持っています。配線パターンに電流が流れることによって、電圧降下が起こります。配線パター ンの直流抵抗値は、微小ですが、流れる電流が大きい場合や、消費先のICが必要とする電源電圧が低い場合だと、ドロップする電圧が無視できなくなります。
  • 特に最近のICは、電源電圧がどんどん低下し、1.0V程度の電源電圧で 動作するものが増えており、このIRドロップの現象に気をつける必要性が出てきました。



■対応方法
 上記の問題点に起因する設計の手戻りが起きないように、事例のような配線パターンになっていないか設計検証する必要性があります。
CADで、目視による配線パターンをチェックするという方法もありますが、回路規模が大きい場合にチェックの抜け漏れが起こる可能性もありますし、そもそも妥当な配線パターン幅がどれくらいで、ビアの個数がいくつであれば十分なのかを導くのは難しいと思われます。設計経験豊かな方でも、ある程度余裕を持ったパターン幅で設計しているとお聞きします。
そこで、電源やグランドの配線パターン設計の妥当性を検証する機能を、図研のLightning PIAのDC解析機能として提供していますのでご紹介します。
この機能は、配線パターンが持つ直流抵抗値は、CADデータから自動計算で算出し、パターンを流れる電流は、消費先のデバイスに消費電力を与えることによって算出し、ドロップする電圧が計算される仕組みです。次に、検証のフローについて確認していきます。