訪問!日本の設計現場

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更新日 2016-01-20 | 作成日 2007-12-03



☑Club-Z編集長の  訪問!日本の設計現場



私は頑固でワガママなんです。
回路設計者の設計意図を100%理解してカタチにしたい。

エス・ピー・デザイン様

2010.12.16

長野県上伊那郡辰野町。鳥のさえずる声が響き渡り、辺りはとてものどかな雰囲気。
静かな住宅街の中に入っていくと、そこに目指す事務所があった。
今回お邪魔するのは「エス・ピー・デザイン」の坂田勝信様。
担当営業からは「とにかくスゴ腕の設計者」と紹介されていたので、やや緊張しながらインタビューは始まった。(本文中は、敬称を略させていただきます。 エス・ピー・デザイン 坂田様:坂田 Club-Z:CZ)

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CZ:この度は、お忙しい中、Club-Zの取材にご協力いただきまして誠にありがとうございます。早速ですが、坂田様のこれまでのお仕事について簡単にお伺いしても宜しいでしょうか?

坂田:最初に入社したのは伸光製作所でした。まだ当時は、手書きやデジタイザーを使って入力作業をしていた時代ですね。そこでは主にハードディスクやFA関連、電源基板などを設計していました。

CZ:その時、普通の会社では珍しい在宅勤務を許されていた時期があったと伺ったのですが、それはどういう経緯だったのでしょうか?

坂田:納期の厳しい設計が多くなり、会社に行っていては追いつかない状況だったのです。そういった事情から在宅勤務をすることになりました。

CZ:通勤時間も惜しいほどハードだったのですね…

坂田:そうですね。仕事はきつかったですが、新規のお客様を担当させていただくことや量産基板の設計も多かったので、とても恵まれていたとも思っています。そうこうしているうちに、CR-3000や東芝さん、オムロンさんのCADなど、いろいろなCADのベンチマーク業務などが増えてきてしまい、パターン設計が思うようにできなくなってしまったのです。それで独立することにしました。ところが縁あって、キョウデンの現会長さんからお誘いがあり、今度はキョウデンで仕事をすることになったのです。でも、次第にこちらでもCADのベンチマークや設計拠点の立ち上げの仕事が増えてきて、設計業務から管理に比重が変わり設計が思うようにできなくなってしまったので、完全に独立することに決めました。

CZ:常に設計者でありたい、と思われたのですね。

坂田:そうですね。とにかく設計がしたかったものですから。

CZ:これまでいろいろな設計をされてきたかと思いますが、その中でも特に印象に残っているお仕事は何でしょうか?

坂田:気障な言い方になってしまうかもしれませんが…一日で終わる仕事も、一か月かかる仕事も、常に全力で取り組んできましたので、どれか一つに絞る、ということはできません。むしろ、どの仕事も印象に残っていると言えます。もちろん、時間的に大変だった、体力的にきつかった、というものはあります。一か月で500時間、一人で1万ピン近くの設計をしたことなどもありましたから。でも、私にとって仕事の大変さ=印象深い仕事、という訳ではないのです。それよりも、今持っている知識や技術を100%出して、いかにお客様のご期待に添えるように仕事をするか、ということの方が大事だと考えています。

CZ:お客様から確固たる信頼を得ているのは、設計製品の完成度の高さだけでなく、「常に全力で」というその真摯な姿勢によるものなのでしょうね。それにしても、一か月500時間やお一人で1万ピンというのは普通では考えられない規模の設計ですよね!通常なら3~4人で分担して設計するものかと…

坂田:後進の人を育てる、ということで、分割設計をしたことはあるのですが、なかなか上手くいかなかったですね…例えば基板設計の場合、部品配置でその基板の善し悪しは80%決まると考えています。部品配置が終わった段階で、パターン設計者の頭の中では80%以上の配線は終わっています。その段階で他の誰かに引き継ぐと、自分の思い描いていたものと全く違うものが出来上がってしまったりするのです。それがよいことなのか悪いことなのかは分らないのですが…自分の思っていたようにはならない。基板を一つの作品と考えてしまうと、どうもこれが気になってしまって、最初から最後までやりたくなってしまうのです。他の人に任せた配線がどうしても気になってしまい、全て引き直してしまったこともあるんですよ…ワガママになってしまっていけませんよね(苦笑)。ただ、すぐ近くにいて意志疎通を行いながら設計ができるのであれば、分割設計も全く問題ないとは思っています。だからBoard Designerのように、一つの基板を分割して設計できるのはよいことだと思っています。

CZ:ありがとうございます。後進を育てる、という意味では、他の人が設計している様子がすぐ分かるということで、弊社のCPD(Concurrent PCB Design)も有効だとお客様からはおっしゃっていただいています。坂田様の「頭の中」や「意志」や長年の経験でしか分からない「ノウハウ」というものを伝えるためには近くで一緒に設計をしないとなかなか難しいのかもしれませんね。ところで、坂田様がこの業界でお仕事をしていく上で、最も大切だと思っていることは何でしょうか?