Club-Z特集:CRユーザーズフォーラムレポート

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更新日 2016-01-20 | 作成日 2007-12-03

☑Club-Z特集

CRユーザーズフォーラムレポート

セット機器/プリント基板業界の最新トレンド

株式会社 産業タイムズ 電子デバイス産業新聞 副編集長 野村和広 氏

2015.03.26

■見過ごされがちな市場

Cz91_CRuser_013.JPG図8:クリックで拡大表示
テスター関係を含む計測機器についても触れておきます。(図8)
この市場は4兆円くらいあり、結構な市場となってきています。2015年1-3月期からは、国内のテスター関係が動き始めていると聞いています。台湾のOSAT(注4)の投資が牽引していると見ます。今年は基板に関しては超高多層~高多層の分野が伸びてくると思います。

もうひとつ大事な市場として、IoT(Internet of Things)にも期待ができます。

IoTの基本というのはセンシングと無線技術、あとセキュリティです。セキュリティはモノづくりというよりはソフトの領域ですので関係ないのですが、センシングと無線技術に注目したいと思います。IoTは、トリリオン・センサー(trillion sensor)という言葉に代表されるように2023年ごろをメドに年間で1兆個(現在の100倍)ものセンサーを積極的に活用、豊かで便利な社会を実現していくものと理解しています。高性能なセンサーには様々なパッケージも必要でしょうし、いろいろなモジュール(基板)も要求されてくると思いますので、ものすごい可能性を秘めている市場だと思います。コストダウンは相当要求されるでしょうが数が膨大なのでそれなりのマーケットを形成すると思います。

また、IoTということで、その狙いの一つ、ビッグデータ処理などのためNTTやGoogleなどが世界各地、あるいは自国で大きなデータセンタを相次いで建設中です。あまり報道されませんが、規模にもよりますが1サイト400~500億円の投資になります。結構、サーバーへの投資が大きいと見られます。このサーバーに使われる基板をはじめ、交換機、次世代ルーターなどのメーカでは、相当ハイエンドな高多層基板が必要になるとみています。最大のものでは50層近い、超高多層な基板を開発しているそうです。これからはこのような基板ニーズも高まります。実際、これらに対応するための投資をしている基板メーカも出始めています。


■プリント基板のトピックス


2014年のプリント基板のトピックスというと、やはりAppleの新型スマホ(iPhone 6)が売れたことです。国内含めFPC業界にだいぶ恩恵があったと思います。実際台湾のメーカも軒並み増収で、かなりの勢いで伸びています。

二つ目のトピックスとしては、米国の基板業界がTTMテクノロジーズ(医療系とか宇宙航空関係に強い基板メーカ)とVIASYSTEMS(米の有力車載基板メーカ)が合併し、世界第3位おそらく2,000億円を超える規模の大きい再編がありました。

また、これはまだ見方が早いもしれませんが、いわゆるパッケージ基板といわれる領域が技術的にも市場的にも大きな変革期に来ていると思います。いまイビデン(株)が苦労しているひとつの理由にはPCが伸びないため、それまでの収益源であったハイエンドのFlip Chip BGAなどの市場がもう限界にきているのかなと思います。それともうひとつパッケージ関連で言えば、スマホ用のアプリケーションプロセッサ(AP)を搭載するFCCSPと言われている領域がひょっとすると消失する可能性があるからです。

というのも、台湾のファウンドリーTSMCが新たなfan-out wafer level packageと言われているパッケージ工法を提唱しております。これは、少しでもパッケージ基板コストを削減するため、再配線でチップ上に配線層を形成して基板レスにしようという発想かと思います。この工法がひょっとすると次世代のAppleのiPhoneやiPadに採用されるらしい(注5)のです。もしそれが本格採用された暁には、FCCSPという市場がなくなる可能性がでてきました。これはインパクト大です。大きな市場を期待していたのが、一気に消失してしまいますので。もちろん様々なパッケージが出てきますのでFCCSP市場がすぐになくなることはないですけれども。技術革新とは恐ろしいところがあります。新しい技術によって、あっという間に市場が変わるということが起こってしまうからです。


■まとめ


最後にまとめとしてぜひお伝えしたいのが、国内の半導体はいまひとつな状況ですが、今後を考えた際に車を含めロボットや医療機器など多岐にわたった企業が日本にはまだまだたくさんあります。そう考えると、ひとつのビジネスモデルとして、多品種少量ということに目をむけていけば、ビジネスの芽はあちらこちらにあるということです。ましてやIoTのような時代になれば、機器の台数そのものも増えてきますが、まったく新しい概念の製品や機器が出てくる可能性もあるのです。ユニークな製品を開発する力というのは国内のセットメーカは得意だと思いますので、国内の基板業界にとっては明るい話だろうと思います。ぜひ、皆さん頑張ってください。

これをもちまして、本日の講演を終わらせていただきます。
ご清聴ありがとうございました。

※注4:OSAT (Outsourced Semiconductor Assembly and Test) 半導体組立検査受託会社
※注5:http://www.sangyo-times.jp/article.aspx?ID=1381



Cz91_CRuser_25.JPG『電子デバイス産業新聞』
http://www.sangyo-times.jp/scn/

日本の半導体産業の縮小傾向と電子デバイス部品の好調という情勢をうけ、また新たに自動車や、日本勢が得意としているFAやロボット関連、医療機器の会社の情勢も伝えていくべく、25年間慣れ親しんだ「半導体産業新聞」から「電子デバイス産業新聞」という媒体に名前を変更しました。より広範囲の業界動向を取材する媒体に生まれ変わりました。是非、ご活用ください。

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