Club-Z特集:CRユーザーズフォーラムレポート

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更新日 2016-01-20 | 作成日 2007-12-03

☑Club-Z特集

CRユーザーズフォーラムレポート

セット機器/プリント基板業界の最新トレンド

株式会社 産業タイムズ 電子デバイス産業新聞 副編集長 野村和広 氏

2015.03.26

■自動車市場における電装化の波


もうひとつ半導体や電子デバイス需要をけん引するのが車です。成長率はスマホと比べ小さく2~3%ですが、単価が高く年間8,000万台超を生産しているので、成長率は小さいものの2020年ごろにかけて右肩上がりで堅調に推移すると見られています。

Cz91_CRuser_005.JPG図2:クリックで拡大表示生産数の増加に加えて、電子化により安心・安全、快適かつ環境性能(燃費改善/低燃費)を確実に確保する動きもでています。それを端的に表しているのが図2です。
また、クルマの製造コストに占める電子部品の比率は、ハイブリットカー(HEV)で47%というのが現在の水準なのですが、2020年にかけて67%まで増加する見込みです。コンパクトカーも環境性能や、ADAS(Advanced Driving Assistant System:安全運転支援システム)を搭載した車がこれからますますでてきます。これが電子化比率を押し上げ、コンパクトカーの電装化比率も高まってきます。

具体的に電装化されていく部分で需要額が多いと見込まれているのが動力系の機構、パワートレイン部分です。2020年にかけて5兆円強の市場が創出されて いくと言われています。次に多いのが、ナビゲーション、位置情報サービス、音声通信などの車載インフォテイメントですが、ここも金額が大きく3兆円弱くらいの市場が新たに創出されると言われています。車の電装化という市場がいかに大きいのかということはこの数字を見ても分かると思います。

今後の伸び率でいうとアダプティブ・クルーズ・コントロールや安全運転支援システム(ADAS)など、安全にかかわる分野が2020年にかけてぐっとあがってくると見られています。ADAS需要の牽引のひとつが各国の規制(※注3)です。「こういう安全な車をつくりなさい」と年ごとに明確なレギュレーションが示され、それに向けて自動車メーカは作りこみを始めています。このレギュレーションがトリガーとなり、先ほどのADASのようなシステムが今以上に搭載されてくると見ています。日本も既に商用車のトラックなどにはこのようなシステムはついているはずですし、今後新車には義務付けられていくでしょう。
Cz91_CRuser_007.JPG図3:クリックで拡大表示
具体的にどういうメーカがどのような機能に取り組んでいるかをまとめたのが図3になります。カメラ(CMOSセンサーなど)をはじめ、ミリ波レーダ、走査型LIDARなどがあります。
注目は、走査型LIDARと言われているものです。LIDARは、ミリ波レーダとレーザーを一緒にしたようなもので、Google Carのルーフにつけたぐるぐると回転している円筒形のものです。それをもっと小型化して低コストにしたものを市場に出すべく、(株)デンソーなどのティア1は、2020年を目途に開発を進めていますが、コストダウンの方向がまだはっきりとは見えていない状況です。いずれにせよ、ティア1は新しいレーダやレーダソフトの開発を推進していこうとしています。



■ロボット化(自動化)は今後どうなる?

Cz91_CRuser_008.JPG図4:クリックで拡大表示
ロボット戦略ということで、国も予算化するなど本腰をいれてきています。それに対してデバイスメーカもしっかりと新規ビジネスを立ち上げてきています。図4にロボット化を導入しようとしている分野とデバイスメーカの動きをまとめました。


いまロボットが一番注目されている分野は、個人的には介護支援だと思います。サイバーダインが製作した、重いものでも簡単に持てるようにした装着型のロボット「HAL」はよく紹介されていて、皆さまもニュースなどで見られたかと思います。また、農林水産業で、今まで天候に左右されていた農業とかでもITを導入することにより、ちゃんと収穫できるような試みもいろいろなされているようです。そういう新しい分野に期待したいと思います。
Cz91_CRuser_009.JPG図5:クリックで拡大表示
また、ロボット市場の中で当面はこちらの方がビジネスに直結すると思われるのがFA・工作機械の需要拡大の動きです。(図5)
各メーカとも大きな投資を国内で予定しています。背景には中国での人件費の高騰の問題もあります。モノづくりのロボットだけではなく、検査工程までロボット化しようという動きもあり、実際に研究開発が進んでいます。新しいコンセプトを取り入れたような検査機器・検査概念がますます人にとって代わってくると思います。部品実装関連では、今までマニュアルで行っていた異形部品や大型部品の実装も自動化すべく動き出しています。中国の人件費高騰により製造業は自動化に向けて一気に動き出そうとしているので、当面FA・工作機械の需要というのは続くと見ています。


■医療分野も有望な市場

Cz91_CRuser_010.JPG図6:クリックで拡大表示
国内には医療機器の市場も大きいと考えます。MRIでは、(株)東芝は世界的にも強いですし、CTだとフィリップスなど大手もありますが、国内メーカも頑張っています。医療機器分野で、比較的新しい取り組みをしている会社を中心にまとめてみました。(図6)



また、市場がどれくらいあるかをまとめたのが図7です。
医療電子機器の市場は、3兆円を超えており右肩あがりに堅調に伸びる分野だと理解しています。
Cz91_CRuser_011.JPG図7:クリックで拡大表示
X線装置だとか超音波装置などは、コンパクトかつ高性能、高解像度なものが要求されてきます。このあたりで電子部品業界にそれなりの需要を創出してくれると見ています。





※注3:欧州でいえば、ユーロ NCAP(European New Car Assessment Programme)ヨーロッパ新車アセスメントプログラムが代表的