Club-Z特集:Zuken Innovation World 2014 アカデミックセッション特別レポート④

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更新日 2016-01-20 | 作成日 2007-12-03

☑Club-Z特集

Zuken Innovation World 2014アカデミックセッション特別レポート④

チップ・パッケージ・ボード間協調設計に向けた
PI/SI/EMI CAE技術
─ 静岡大学電子工学研究所 静岡大学卓越研究者 浅井教授による講演内容のご紹介

2014.10.30

10年間に回路シミュレーション技術界で起きたこと

ではこの10年間、回路シミュレーション技術の世界ではどんなことが起こったのでしょうか。
その最たる変化が10年ほど前から普及し始めた3D CADです。これにより、今までのシミュレータでは見えなかったものが見えるようになり、多層基板の動きなどもレイヤーごとに分かるようになりました。
そこで私達は3D CADを使った「回路版FDTD法」の研究を進めました。

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具体的に説明しましょう。電子回路は、電流と電圧により支配されています。そこには電流変数と電圧変数があるので、FDTD法で多用されているような電界と磁界を交互に解析する考えを応用すれば、電圧と電流を交互に解析する方法が成り立つ訳です。私達はこれに着目し、回路版FDTD法とその拡張を考えました。

ところで、FDTD法はSI・PI・EMI解析だけでなく様々な電磁気解析に応用されている汎用的解析技術です。他の解析技術に比べ定式化が分かりやすく、実装や並列化が容易なためです。加えて微小セルによる任意形状への対応と言う拡張性の高さも魅力となっています。
反面、セルによりメッシュ化されたモデルが解析対象になるので、LSIのような微細構造物の場合はセル数が膨大になり、その解析には膨大な計算時間がかかる欠点があります。

変数を交互に計算するleapfrogアルゴリズムを回路に応用した方法としてLIMが提案されていますが、私たちは更なる解析時間短縮を図るため、三次元画像処理に使うGPUをサンプルに試行錯誤を重ねました。その結果、従来のLIMより30倍から60倍以上高速なシミュレータを構築しました。
従来のLIMではカップリングの影響が考慮できませんでした。その解決策としてカップリング箇所を一つのブロックとしてleapfrogアルゴリズムを適用し、相互インダクタンスと相互キャパシタンスで結合された回路網を解く方法を「ブロックレベルのLIM」として2011年~2013年に発表してきました。

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これで電子回路のシミュレーション時間大幅短縮が可能となり、先ほどの「シナリオ」完成の道筋がようやく見えてきたところです。