☑Club-Z特集
いよいよ本番!「部品内蔵基板」への期待と課題
2014.05.22
標準化活動「JPCA-EB02(FUJIKO)」について
効率のよい製造設計ができるようにすることには設計と製造をつなぐ共通のフォーマットが必要となります。そこで業界で動き出したのがJPCA規格 JPCA-EB02(FUJIKO)フォーマットの標準化推進です。
従来製造現場には、ガーバーフォーマットというもっとも基本的な描画情報だけしか渡っていませんでした。ガーバーフォーマットに書かれている情報だけでは、部品内蔵基板を作るには情報が不足しているため、製造現場ではガーバーフォーマットからネット情報や、部品情報を苦労して取り出し、ある意味CADデータを再構築しているのが現状です。この問題の要因は2つあり、ひとつは前述してきた部品内蔵基板特有の3D的な情報を記述するフォーマットが用意されていないこと、もうひとつは機密が保持されないことです。
この問題を解決するために、JPCA 規格JPCA-EB02(FUJIKOフォーマット)の標準化を推進しています。FUJIKOフォーマットには3次元の基板座標や部品形状がデータに含まれるため、内蔵部品の搭載状態などが認識でき、実装装置や検査装置での情報活用による製造現場での効率化が期待できます。
■標準化の目指すもの
標準化の意義とは何か。ユーザーの利便性は言うまでもないが、標準化には標準化を行う側の利益を守るという一面がある。日本の自動車メーカが自動車レースF1で優勝すると、次年度からエンジンの規格が変わったという例もあるように、標準化、規格化はそれを推進する側にメリットがある。自分たちが有利になる規格を自分たちで決めることもできるからである。
半導体産業が生まれて1980年代前半までは、アジアで半導体が製造できるのは日本だけであった。アメリカから装置と技術を導入し、生産したICで家電製品を作れば世界中で売れた。しかし、80年代後半から、台湾、韓国、中国などでも装置を購入してICが製造できるようになった。今、どこでICを製造するのが合理的か。それは、大量に家電製品を消費する場である。したがって、日本でICを製造して中国に送る、というストーリーは成り立たない。プリント配線板も同じである。しかし、ICや基板に必要な先端材料や製造装置の分野は、まだ日本に優位がある。この優位性を維持、発展させることは可能だろうか。その答えの一つが標準化である。工法や材料の規格を定め、信頼性試験方法を標準化し、簡単に模倣することができなくなるようにすれば、優位性を保つことができる。一方で、あまりにクローズドな規格ではやがて孤立して廃れていってしまう。日本の基板設計・製造技術の優位性を維持しながら、上手に他国も取り込んで普及させていくには非常に難しいさじ加減が必要となるだろう。しかし、今度こそかつての二の舞いにしてはいけない。
これまで、世界中でさまざまなデータフォーマットが提案され、淘汰されてきた。FUJIKOの利点は、日本のCADメーカ、装置メーカが主体的にフォーマットを決め、自ら検証しながら、バージョンを上げることができる点にある。これまで、日本人には標準化は馴染まず、他人の規格に従うのが好きと言われた時代もあった。しかし、優位性のある技術を育て、それを標準化することは国益である。そして我々は、それを蔑ろにした結果がどうなるか痛いほど知っているはずである。
三次元半導体研究センター
●執筆者プロフィール
友景 肇 (TC91 WG6 convener)
1953年生まれ。1977年九州大学工学部電気工学科卒業。1982年九州大学大学院工学研究科博士課程後期(電気工学専攻)修了。1982年福岡大学工学部電子工学科講師。1985年福岡大学工学部電子工学科助教授。
1987年米国スタンフォード大学客員研究員。
2009年6月~2011年5月エレクトロニクス実装学会会長
現在、福岡大学工学部電子情報工学科教授・工学博士
最後になりましたが、ご案内です。
6/4(水)~6/6(金)東京ビッグサイトにてJPCA Show 2014が開催されます。その中の「JPCAダントツ生産性向上PJパビリオンセミナー」にて、「設計データフォーマットFUJIKOを用いた超高効率電子回路実装基板の製造効率向上の推進及び普及の為の展示及びセミナー実施」を行う予定です。(東ホールH会場)
http://www.jpcashow.com/show2014/jp/event/pj.php
図研を初めとして、FUJIKOプロジェクト参加企業・研究機関が参加して、セミナー(無料)および実演をします。是非ご来場ください。
電子機器はこれから地球規模での普及期に入ります。日本は電子機器の世界で「軽薄短小」、「ケータイ」、「JISSO」と言葉まで創って広げてきました。次の時代でも日本がイニシアティブをとっていけるよう活動していきましょう。