Club-特集:実装軽視に物申す!

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更新日 2016-01-20 | 作成日 2007-12-03

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実装軽視に物申す!

第2回:JISSOでもう一度日本が勝つ道 キーワードは「3D」と「規格化」

福岡大学 工学部 電子情報工学科教授・工学博士
友景 肇


2011.08.25

■三次元半導体研究センター建設
部品内蔵基板に特化した研究機関を作れば、勝てる可能性がある。しかし、これまでにはない、企業の枠をはずす仕掛けが必要である。学会、規格部会その他関連ある企業の人たちと話をしながら、三次元半導体研究センターの構想が走り出したのは2009年の春である。2009年8月に、福岡県が中心となってJSTに地域産学官共同研究拠点整備事業に応募し、採択された。2009年12月には、導入する装置を決め、建物の設計が始まった。2010年8月22日に福岡県糸島市の山を切り崩した場所で、鍬入れ式があった。熱中症で倒れる人がでる程の猛暑日であった。それから急ピッチで建設工事が始まり、2011年の正月を過ぎてからは昼夜なしの工事現場となった。そして、鍬入れから7カ月後の3月21日に開所式を迎えた。

図2に外観写真を示す。3300平方メートル2階建てで、1階は全て実験室である。部品内蔵基板を600×400mm 2 のサイズで製造することができる基板製造ラインと8インチでTEGチップを製造できるウェハライン、それに基板の電気特性評価や落下、振動試験など信頼性試験を行う施設がある。

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図2 三次元半導体研究センター


基板のリソグラフィを行った後の、現像エッチングのラインと銅のめっきラインを、それぞれ図3、4に示す。

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図3(左):現像、エッチングライン   図4(右):電解、無電解めっきライン



シリコンのウェハランは、8インチでTSV構造のTEGを製造できる。リソグラフィとTSV加工のエッチャーなどが並んだクリーンルームをそれぞれ図5、6に示す。

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図5(左):8インチのリソグラフィ室   図6(右):TSV加工ライン



クリーンルームを運転する機械室やコンプレッサー室などは、1階にスペースがなくなったため、2階に設置した。企業の枠を越えて自由に語り合え、議論する場を作りたかったので、2階には1辺が27メートルの巨大な研究員室を用意した。また、ウッドデッキの喫煙所やカウンターキッチン付きの交流スペースなどもある。

訪問者のほとんどの人が想像以上の大きさで、驚かれる。しかし、部品内蔵基板の技術が研究室レベルの小型基板でできたとしても、量産技術にするための壁は高い。それに、新しい材料や新しい装置を使っての量産に近い状態での試験が不可欠である。ある意味無謀な施設は、既成概念の破壊には効果がある。

3月の開所式後、どうなったか。すぐに、装置の繋ぎ込み、立ち上げが始まった。75機種の装置を導入したため、全ての繋ぎ込みが終わったのは6月末であった。センターやプロジェクト雇用の研究員と企業から参画していただいている研究員が全力で立ち上げ、現在ラインの最高性能を出すための基板開発を行っている。また、ウェハラインでは、TSV接続するTEGチップとシリコンインターポーザの開発を行っている。