Club-特集:実装軽視に物申す!

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更新日 2016-01-20 | 作成日 2007-12-03

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実装軽視に物申す!

第1回:JISSOでもう一度日本が勝つ道 キーワードは「3D」と「規格化」

福岡大学 工学部 電子情報工学科教授・工学博士
友景 肇


2011.07.21

■世界の半導体製造研究開発拠点
ヨーロッパの半導体研究の中心は、ベルギーにあるIMEC(Interuniversity Microelectronics Centre)である。1984年に設立され、現在研究者は2千人で、ヨーロッパだけでなくアジアからも研究開発資金を集めている。12インチのSoCラインだけでなく、5インチのMEMS専用のラインもあり、実装の技術開発にも力を入れている。また、ドイツにはフランホーファー研究機構があり、ドイツ国内に56か所の研究所があり、研究員は13,000人である。その中で、ミュンヘンにあるフランホーファーIZM(フラウンホーファー信頼性・マイクロインテグレーション研究所)はマイクロインテグレーションの中心で、300人の研究者がいる。図2は、フランホーファーIZMの写真である。また、フランクフルトやケムニッツは、部品内蔵基板やMEMS開発が盛んで、専用の試作ラインをもっている。

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図2 フランホーファーIZM(ミュンヘン)



台湾は九州とほぼ同じ大きさで、人口は九州の2倍であるが、半導体の研究所ITRI(Industrial Technology Research Institute)があり、これまで、1,500億円を台湾政府が投資したとのことである。図3は、その中心的建物である。全体で6,500名の研究者、スタッフがおり、年間獲得予算は600億円という。TSMC(Taiwan Semiconductor Manufacturing Company)を輩出したSoCテクノロジーセンターは有名であるが、EOL部は500名の研究者で3次元実装を研究しており、Ad-STAC(Advanced Stacked-System and Application Consortium)というコンソーシアムが現在走っている。これは、台湾政府主導で、チップの積層を行うための企業コンソーシアムで、12インチウェハレベルの実装ラインがITRIに完成している。

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図3 ITRI



香港は、人口700万人で年間国家予算が3兆円とのことで、日本に比べて財政規模は大きくない。しかし、海を埋め立てて、香港サイエンスパークHKSTPを建設した。現在、フェーズIとIIが完成しており、これまで1,600億円を投資したとのことである。図4に示すように、美しいビル群があり、無線通信の研究所、半導体設計、評価・解析、テストなどが行えるセンターが完成し、240社が入居し、6,500名が働いている。また、香港科技大学では、4インチながら、ICの設計から製造までできるラインの他にCAMPと称する実装センターがあり、印刷装置、リフロー、試験装置など何でも揃っている。

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図4 香港サイエンスパーク



シンガポールには、IME(Institute of Microelectronics)とSIM TECH(Singapore Institute of Manufacturing Technology)という2つの国立半導体研究所がある。IMEは研究者250名で、シンガポール国立大学と連携し、SoC研究だけでなくマイクロシステムやモジュールの研究を行っている。また、SIM TECHは研究者350名で、ナンヤン工科大学と連携して、実装研究を主として行っており、工場のような巨大な装置群がある。

韓国では、サムソンとアプライドマテリアルズが主な出資者となって3dEMCというコンソーシアムが立ち上っている。これは、シリコン貫通電極TSVを用いてチップを積層する技術を中心として、企業、大学が集まったものである。EMCのEはEquipment、MはMaterialsで、これまで日本が強いと言われたてきた装置と材料をコンソーシアム名に付けている。

日本では、超先端電子技術開発機構ASETでドリームチップ・プロジェクトが走っている。また、日本の電気メーカでは、各社で独自に三次元実装の研究開発を行ってきた。しかし、今世界中で起こっていることは、大規模な製造技術の研究所を立ち上げ、研究者を海外から雇用して一気に研究を進めるスタイルである。最初は何もなくても、すぐに研究レベルは上がり、しかも研究機関の国際的な連携は日本以上に進んでいる。


■福岡での取り組み
日本の大学や研究機関でも三次元実装の研究は行われている。それらのレビューが目的ではないので、ここでは省略する。福岡県は2002年から文部科学省知的クラスター創成事業及びそれに続く地域イノベーションクラスター事業を受託し、先端システムLSI開発クラスターを推進してきた。現在、「半導体実装プラットフォームの研究開発」プロジェクトでは、MEMSデバイスを含むSiP設計のためのEDAツールやSiP評価装置、及び部品内蔵基板評価用テストチップTEG の開発などを行っている。また、研究の出口の一つとして、2011年3月に福岡県糸島市に「三次元半導体研究センター」が開設された。ここには、部品内蔵基板の設計から試作、評価、試験を行う一連の施設と、部品内蔵基板評価用のTEG (test element group)チップを試作する8インチのウェハラインが揃っている。また、信頼性試験を行うための落下装置や高温・高湿振動装置、電気的評価もある。