コラム
グローバル化は設計・製造の仕組みを見直すチャンス
【第21回】仕組みの見直しに成功する組織とは
株式会社RDPi 代表取締役 石橋 良造
2009.04.23
次に特徴としてあげることができるのは、マネジメントのコミットメントです。
ここでいっているマネジメントとは、仕組み見直しに対するオーナーシップとスポンサーシップを持つマネジャーのことです。部長クラス以上のシニアマネジャーという感じでしょうか。仕組みの見直しを実行するのに必要なメンバーや費用などを決裁できる立場のマネジャーというと、もう少し正確かもしれません。ここでは、シニアマネジャーという表現で統一しておきます。
コミットメントという言葉はよく聞くようになりましたが、単に宣言した約束を守るというようなイメージがあるのではないでしょうか。たとえば、「仕組み見直しのためのプロジェクトチームを作ったし予算もつけた。これで、シニアマネジャーとしてのコミットメントは果たした」と満足しているシニアマネジャーは多いものです。でも、コミットメントとはもっと重い意味を持っているのです。
それでは、試しに図61のクイズを解いてみてください。コミットメントの意味を確認するためのクイズです。
では、答えです。
この2人のうちコミットしているのはブタの方です。ニワトリはハムエッグを作るのにタマゴを提供するわけですが、この場合、たくさん産んでいるタマゴのひとつや2つを差し出すのは当たり前のことでしょう。しかし、ブタは自分の肉を切り取って差し出すことになります。まさに、自分の身を削ってハムエッグを作るわけです。コミットするとは、このように自分自身の身を削る覚悟ができているということですし、実際、コミットしたことを実行するときには自分の身を削ることになるわけです。
シニアマネジャーが仕組み見直しのためのプロジェクトチームを結成し予算をつけるというのは、マネジャーとして当たり前の仕事をしただけであってコミットメントを実行したとはいえません。プロジェクトチームのミーティングに出て自分の思いを伝える(忙しいにもかかわらず自分の時間を使うということです)。上位のマネジメントや経理と掛け合ってメンバーや予算が足りないという声に答える(自ら普通では確保できないメンバーや予算をとるために汗を流す)。少なくとも、シニアマネジャーにとってのコミットメントとは、このような行動をとることだといえるでしょう。
シニアマネジャーがこのような覚悟を持っていること、そして、実際に自分の時間を使うなど身を削る行動を起こしていること、こういうシニアマネジャーがいると仕組み見直しは絶対に成功します。シニアマネジャーがコミットメントを体現するのは何か問題が起きたときだけでも良いのです。コミットメントを体現するシニアマネジャーは仕組み見直しに関係しているメンバーだけでなく、組織全体を変えます。