Club-Zコラム第10回

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更新日 2016-01-20 | 作成日 2007-12-03

コラム


グローバル化は設計・製造の仕組みを見直すチャンス

【第10回】政治的要因の検討で決まるスケジュールの確度・精度

株式会社RDPi  代表取締役 石橋 良造


2008.05.29

このようにスケジュールを作成する(日程を決める)ときには、仕組み構築のロジックやシステム化の技術的な側面だけではなく、組織や人を含めた大局的な視点が必要になります。これを政治的要因の検討が必要だと表現しているわけです。もうお気づきの方も多いと思いますが、これはリスク管理を行うということです。

リスク管理とは、簡単にいうと以下の仕組みから成り立っています(図26 を参照のこと):

  1. 想定外のイベント(リスク)を可能な限りリストアップし、その一つひとつに対して、リスクが顕在化する可能性、顕在化したときの影響度合いなどを評価して、リスクの重大性を分析する
  2. 個々のリスクに対して、顕在化しないための予防策と、顕在化した後の影響を軽減するための対応策を検討する
  3. リスクの状態を継続的に監視する


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今回の政治的要因の検討というのは、ここでいう A と B を実施することに他なりません。このように書くと、リスク管理はすでに仕組み化できており、今回のようなことは実施しているという反応が多いかもしれません。しかし、「リスク管理シートを作って管理しています」「進捗会議でリスク管理をやっています」というように「リスク管理」という単語を使っているだけで、リスク管理をやっていると考えている組織が非常に多いのが現実です。「リスク管理」がマジックワードになってしまい、この言葉を使うと思考停止状態になっているのです。

リスク管理ができている組織というのは、次のようなことを実施していることが多いようです。リスクを洗い出してその重大性を評価し、事前の予防策、事後の対応策を検討して文書化(一元管理)し、進捗会議で定期的にアップデートする。しかし、このようなリスク管理の仕組みは課題管理とは何が違うのでしょうか。課題管理は問題が起きた後の管理で、リスク管理は問題が起きる前の管理という違いはありますが、管理手法としての違いはほとんどないため課題管理としてひとつにしても良いくらいです。実際、課題とリスクと一緒に管理していることも少なくありません。

リスク管理は、想定外のことを極力なくすことが目的です。何が起きても想定の範囲内なので、右往左往せず落ち着いて計画通りに対応できる準備をしておくためのものです。したがって、リスクを計画に反映できているかどうか、そして、その計画を関係者の間で共有できているかどうかが重要です。つまり、リスク管理を実施することが、計画の精度や確度を保証することにつながっていないと意味がありません。