コラム
グローバル化は設計・製造の仕組みを見直すチャンス
【第9回】登山ルートの作成は仕組み構築の設計作業
株式会社RDPi 代表取締役 石橋 良造
2008.04.17
まず、「(b) 開発試作は4ヶ月間程度のかなり工数を使う作業であるが、試作(開発試作)製作や顧客対応など、設計部門が様々な作業を請け負っているため負担が大きい」という課題です。この文章は少々わかりづらいので、図20(第7回)を見ると良いと思います。開発試作段階で大きな工数を使っていること、そして、開発初期であるにもかかわらず、構想、設計、施策関連、プロジェクト管理、顧客対応という様々な異なった作業を実施していることがわかります。開発試作というと簡易的に試作製作しているイメージがありますが、この設計部門では負担の大きな作業になっているわけです。
前回のような詳しい分析はしませんが、調査・分析によって次のようなことがわかりました。
- 開発試作は顧客や社内に対して実物を使ってイメージを伝えるための試作であり、そのために見た目を重視したプロトタイプを作成する必要がある。
- 従来機種のフロントパネルだけを交換したり、新しいユニットを最低限動かすようにソフトウェアを修正したり、ラピッドプロトタイプで全体の形状と基板の構成を確認したり等々、技術者がその都度様々な工夫を行っている。
- リーダーは社内工場を使うことができず、社外の試作会社を使ったり、社内ソフトグループや社外ソフト会社と交渉したりと、管理業務に忙殺されている。
- リーダーは、仕様や計画の打ち合わせのために毎週1~2日は顧客を訪問する必要があり、さらに、顧客向けの説明資料作成などのバックオフィス作業もこなしている。
- 従来機種の調査や新規デバイスの情報収集、エレキ、メカ、ソフトそれぞれの担当者への作業指示などで手一杯となり、本来の構想設計を行うことができない(そのため後になって不具合が起きている)。
この開発試作の段階ではリーダーがボトルネックになっていることがわかります。詳細は省略しますが、これらの現状に対する根本原因分析の結果、次のようなことがわかりました。
4. 顧客対応とプロジェクト管理を兼務するのは非効率
5. 従来の設計データや社内の技術情報の検索が不十分
6. 構想設計や再利用のための手法・環境が整備されていない
「(c) 2Sという試作期間にもっとも多くの工数がかかっており、設計作業、評価作業ともに最大の工数が必要になっている(工数手当て・調整が容易ではない)」という課題についても見てみましょう。
図20(第7回)を見ると2S(第2試作)の期間が開発を通じて最大の工数がかかっていることがわかります。したがって、この期間の効率化は必須です。ここでの課題は今まで挙げてきた課題と重複することが多いため、重複しないものだけをリストアップしておきます。
- 2Sから自社工場の製造ラインを使うのだが、その準備に設計者が走り回っており、試作関連や評価としている作業の多くを占めている。
- 2Sにおけるソフトウェアの完成度が低く、最低限の動く状態になっていないため、試作評価や顧客提供のための準備や対応に時間がかかっている
根本原因もこれまでと重複しないものだけを挙げておきます。
7. 設計データを使った製造性評価を十分に実施していない
8. ソフトウェア開発に適したプロジェクト管理になっていない
最後に「(d) 開発期間を通じて、設計作業、試作関連作業、評価作業が同時に実際されており、開発の状況把握やマネジメントは容易ではない」という課題です。
これは根本原因だけを挙げておきましょう。
9. 開発状況をマクロ的、定量的に把握する手段がない
10. リーダーにとってメンバーのマネジメントが後回しになる