コラム
グローバル化は設計・製造の仕組みを見直すチャンス
【第4回】目指すべき開発体制は擦り合わせ型か組み合わせ型か
株式会社RDPi 代表取締役 石橋 良造
2007.09.20
それではまず、「組み合わせ型」と「擦り合わせ型」の製品開発におけるマネジメントがどのような特徴を持っているのかを考察しましょう。
「組み合わせ型」の開発マネジメントはトップダウンが基本です。トップであるプロジェクトマネジャーが、開発方法や業務ルール、メンバーの役割などを提示し、また、開発初期に製品内部構造(アーキテクチャ)も明示します。マネジメントも設計も曖昧な部分や抜けを極力なくしたロジックを構築することに心血を注ぎます。そして、末端の開発メンバーにまでこれらを伝えるためすべてを文書化します。
一方「擦り合わせ型」の開発マネジメントはボトムアップが基本です。開発現場が主導権を持ち、自分たちで状況判断し、問題を見つけて対応策を検討し対処します。必要に応じて必要な人と相談しながら問題解決するわけです。このような状況下ではマネジメントは重要な役割を果たすことは多くはないのですが、個々のベクトルがバラバラになりそうな場合はベクトルを合わせて目標達成に向ける役割を果たす必要があります。
図12に、以上の「組み合わせ型」と「擦り合わせ型」のマネジメントの違いを整理しました。ご覧ください。
余談になるかもしれませんが関連したことを一つ。多くの組織でISO9001やCMM/CMMIなどの開発プロセスの仕組み導入が進んでいますが、品質向上など一定の成果があるものの、開発現場は文書化などのオーバーヘッドに四苦八苦しているとよく聞きます。技術者にしてみれば「そこまでする必要はないんじゃない?」という「やらされ感」が根底にあると考えて良いでしょう。
これは、ISOやCMMIなどの開発プロセスの仕組みは「組み合わせ型」を前提とした仕組みであり、「擦り合わせ型」の開発マネジメントを変えることなく表面的な仕組み導入だけで対応しようとしていることが原因だと分析することができます。多くの開発組織は「擦り合わせ型」マネジメントで動いているのが現実ですから、ISOやCMMIなどを「教科書」と考えてそのままの形で導入・運用しようというのは短絡的だと言えるでしょう。そして結局のところ開発現場にしわ寄せが来ているのです。
ISOやCMMI などが大切なのは間違いありませんが、大切なのは、これらのもともとの仕組みを換骨奪胎して「擦り合わせ型」にフィットさせることです。今回お話ししているテーマと同じです。「擦り合わせ型」の開発の仕組みで「組み合わせ型」アーキテクチャの製品開発を行うための工夫に焦点を合わせることが重要なのです。
さて、今回は最近取り上げられることが多い「擦り合わせ型」と「組み合わせ型」の考え方を使って開発体制の考察を深めました。体制を含む開発マネジメントについて面白い視点の一つだと思っているのですが、いかがだったでしょうか。次回は、「擦り合わせ型」マネジメントを機能させるためのポイントを考察し、その上で「組み合わせ型」製品を開発するための工夫について解説したいと思います。
「擦り合わせ型」と「組み合わせ型」のねじれはプロジェクト管理の仕組みにも工夫を必要とします。プロジェクト管理についてこの連載では扱いませんが、10/18の図研プライベート展(1B3/13:00~)でお話しします。プロジェクト管理にご興味をお持ちの方はぜひご参加ください。
次回は具体的な「工夫」について解説したいと思います。 引き続き、ご意見やご質問をお待ちしています。