Club-Zコラム第1回

印刷用表示 | テキストサイズ 小 | 中 | 大 |


clubZ_info_renewal.jpg

| HOME | コラム | グローバル化は設計・製造の仕組みを見直すチャンス | 第1回 | P2 |

更新日 2016-01-20 | 作成日 2007-12-03

コラム


グローバル化は設計・製造の仕組みを見直すチャンス

【第1回】現場技術者の犠牲によるグローバル化はもう限界

株式会社RDPi  代表取締役 石橋 良造

2007.06.21

利益重視の攻めのグローバル化には、開発・生産・販売・調達・物流などの幅広い領域で従来の国内中心業務を変革することが要求されるため、製造業各社はその要求に応えるべく、あらゆる分野で仕組み改革を実施しています。しかしながら、開発現場にコンサルタントとして入って感じるのは、「開発」はグローバル化の仕組みがもっとも遅れているということです。

開発現場では常に開発生産性や開発効率の向上に取り組んでいますが、それが、新しい仕組みを構築するのではなく、技術者個人に対する負担を増やしているだけになっているのです。

技術者は優秀で素直ですから、個人の力でその要求に応えていますが、技術者に同じ期待をするのはそろそろ限界ではないかと感じます。実際、開発現場では精神的、肉体的に疲弊した技術者が増えています。メンタルヘルスの取り組みが活発になっていることもその現れだと思います。

しかし、グローバル化の流れは変わることはないでしょう。したがって、これからのグローバル化に必要なのは、優秀な技術者個人に負担をかけるのではなく、きちんとした開発の仕組みを構築することです。そうしなければ、今後、攻めのグローバル化を進化・進展させることは難しいと思います。繰り返しますが、技術者に負担をかけるのは限界に近づいています。

新しい開発の仕組み構築には、開発(とくに設計)の現状を正しく把握する必要があります。しかし、大量の専門用語や技術者の独善的な姿勢が製品開発をブラックボックスにしているため、開発(設計)の実態把握を難しくしているのが現実です。少々言い過ぎかもしれませんが。

そこで私は、製造移管(工場引継)を詳しく調査することをお勧めします。製造移管(工場引継)は、設計したものを工場で生産するために、製造に必要な設計データ一式を引き渡す作業です。そして、設計部門(技術)と製造部門(工場)の両方が関わりますから、設計データだけでなくそれまでに実施した設計業務の良否を第三者的に観測できるイベントです。また、製造移管は業務規定や手順書がしっかりと文書化されていますから、計画(規定)と実際の差異を把握しやすいのです。

製造移管の典型例をご紹介しておきましょう。

多くの開発組織では製造移管を一大イベントとして規定しています。製造移管のタイミングで一括して設計から工場に必要なデータを渡し、それ以降は設計部門(技術)ではなく製造部門(工場)がすべての作業を担当します。設計者(技術者)はこのタイミングで次の製品開発に取りかかることができることになります。

さらに、この定義通りの製造移管を実現するためには、引き渡す設計データの完成度を高くしなければいけませんから、DR(設計レビュー)と称して段階的にチェックを行い設計完成度を高める仕組みになっています。したがって、開発工程は図2のようになります。

仕組み上は、設計部門が製造移管のタイミングで次の製品開発に取りかかることを期待しているわけですが、現実は多くの問題が発生して期待通りにはなっていません。そして、発生した問題に技術者が柔軟に対応しているために、問題とその原因を見えづらくしてしまっています。しかし、製造移管で現状の仕組みの弱点が顕在化しているのです。

column_20070620_002.jpg