アナログ回路

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更新日 2016-01-20 | 作成日 2007-12-03


☑アナログ&ミックスド・シグナル回路の設計と
 基板レイアウトで知っておくべき基礎技術

1.基本的な物理現象を理解して回路設計やレイアウトを成功させよう

アナログ・デバイセズ株式会社 石井 聡

2010.08.26

連載の開始にあたって

一般的なデジタル回路設計と比べて、アナログ回路やミックスド・シグナル(デジタル・アナログ混在)回路をきちんと設計しレイアウトすることには、かなり多くの問題が伴ってきます。
この連載では、これらの回路設計やプリント基板のレイアウトを問題無く成功させるための基礎技術を、「物理現象」という視点で説明していきます。「物理現象」とはいえ、非常に基本的なイメージで理解できる内容です。実際の設計やレイアウトにとても大切なことなので、懇切に説明していきたいと思いますので、ぜひ本連載にお付き合いいただければと思います。

イントロダクション

■レイアウトに起因する疑似的成分や寄生成分が問題になる
電子回路を設計するとき、コンピュータ上でSPICEなどのシミュレーション・ソフトウェアをいかに使うにせよ、正しくハードウェアを設計し、プリント基板上でレイアウトしていくなかで、だいたいの場合「最も重要なこと」を忘れがちです。
それは、設計しているのが現実のハードウェアである以上、シミュレーション上ではなく、「正常に動作することが実際に確認されるまでは、設計は完了していない」ということです。
この意味は、理論とモデリング上においては申し分ない設計を、現実の回路として動作させたときに「発生しそうな諸問題がある」ということです。実際に起きる問題は、設計した回路レイアウトに起因する疑似的成分や寄生成分、そしてシミュレーションでのモデリングの際に現実的要素の影響を、十分に考慮していなかったことによるものです。

■電子回路で起こる「マーフィーの法則」という呪縛
その点からすると、この連載は「マーフィーの法則を思い出してみよう」と言っても過言ではないかもしれません。図1-1は筆者が保有する「マーフィーの法則」の書籍、そして「マーフィーの法則」は図1-2のようなものです。
また、わたしたち電子回路設計の分野での(よくありがちな)マーフィーの法則は、図1-3のようなものと言えるでしょう。

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図1-1 書籍「マーフィーの法則」アーサー・ブロック著、倉骨 彰訳、アスキー出版局

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図1-2 「マーフィーの法則」はこのようなもの


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図1-3 電子回路設計の分野での「マーフィーの法則」


マーフィーの法則はふざけて使われることが多いのですが、まったくの「ふざけたジョーク」というものではありません。この図1-3は「そういえば思い当たるなぁ」という人も多いのではないでしょうか。
電子回路の設計においてマーフィーの法則は、「物理システムの複雑さを認識し、過度にシステムを単純化することに対して注意しなさい」と警鐘を鳴らすものと言えるでしょう。物理システムという点では、これは、理論物理学の神様アインシュタインの「何事もできる限り単純化しなければならないが、単純化しすぎてはいけない」という警告に通じるところがあります。

■きちんと設計し、レイアウトすることで「マーフィーの法則」の呪縛から逃れよう
物理システムである電子回路は「マーフィーの法則」のとおり、「実機が動くまでは未完成」なのです。でも、予測しきれない「物理現象」であっても、設計段階やプリント基板のレイアウト段階で、「注意を払うべきこと・払わなくてはいけないこと」に十分注意していけば、これらのトラブルへのハードルをかなり低くすることができます。

実際のプリント基板をみながら連載のこれからを考える

■「物理現象」の影響を考えながら設計やレイアウトする重要性
この連載では、アナログ&ミックスド・シグナル・システムでの、ハードウェア設計やプリント基板のレイアウトにおいて検討しなければならない、さまざまな「物理現象」の影響を説明していきます。
図1-4は筆者が最近設計完了したアナログ&ミックスド・シグナル・プリント基板です(実験・デモ用)。近年の微細なパターン設計ルールからすれば全く正反対の簡単なものと言えるものですが、それでも「物理現象」の基本法則が満載されています。

それらの基本法則……つまりこの連載で説明していくこと……に則って(のっとって)レイアウトされているため、きちんと動作する基板として完成しています。

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図1-4 筆者が最近設計したアナログ&ミックスド・シグナル・プリント基板