「OTA」とは?

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更新日 2016-01-20 | 作成日 2007-12-03

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設計者にも知ってほしい。マイクロ波の基礎知識

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「OTA」とは?

マイクロウェーブファクトリー株式会社
2015.06.25

■「OTAの拡張~MIMO OTAへ」


スマートフォンやタブレットの登場と同時に、3G通信から4G(LTE)通信へ切り替わりました。これにより携帯電話の主な機能は通話からデータ通信へ切り替わり、動画やゲームをするようになってきました。このような携帯端末の無線通信は、単一のアンテナ通信SISO(Single Input Single Output)方式から、複数のアンテナを組み合わせたデータ通信MIMO(Multi Input Multi Output※通称マイモ)方式へ変わることで、劇的に通信速度(スループット)が改善されてきています。これに伴い、通信速度も無線性能評価として必要となり、携帯電話の進化と共にOTAも進化しています。

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通信速度は、電波環境によって変化します。例えば、都市部や郊外、電車にのっている環境でもそれぞれ変化します。このように、無線通信で届く電波の強弱が何らかの理由により変動することをフェージングといいます。
MIMO OTAでは様々な環境を模擬し、携帯電話の通信速度にどの程度影響を与えるかが評価できるようになりました。
MIMO OTAシステムについてご紹介いたします。


■MIMO OTA測定システム


①「フェージングエミュレータ型」

「フェージングエミュレータ型」は、大型の電波暗室を用いて動的なフェージング環境を生成します。また評価端末を囲むようにOTAアンテナを複数配置することで伝搬環境のフェージングや遅延、振幅・位相を変化させて様々な環境モデルを生成することが可能なシステムです。

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弊社測定サイトのイメージ図

MIMO OTAの性能は、試験端末のMIMOアンテナ性能によります。携帯電話のMIMOアンテナは、受信アンテナ2本で構成されています。携帯電話のMIMOアンテナ性能は、その2本の受信アンテナの利得差と相関で決定し、利得差は少なく、相関の低い(各アンテナ放射パターンの振幅と位相が異なる)方が性能は良好となります。


実際に「フェージングエミュレータ型」のMIMO OTA測定の測定結果が電子情報通信学会で報告されています(※1)。試験端末A/B/Cを用いてMIMOアンテナ性能が異なる(性能差:A = B > C)場合、通信速度にも同様に差が出てきています。MIMOアンテナ性能が等しい端末A,Bと、性能がそれより劣る試験端末Cを使って測定を行った結果、電波状況の変化に対して通信速度にも同様な差(電波状況が悪くなると性能が劣る端末の通信速度が遅くなる)が見られました(下図) 。「フェージングエミュレータ型」のMIMO OTAが非常に正確で有効であることが分かる結果です。



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②「2ステージ法」

「2ステージ法」は、Keysight(旧Agilent)社が提案する手法で2ステージに分けることにより、従来の設備を活用して行う比較的コストがかからない試験方法です(※2)

【Stage1】評価端末に実装されたアンテナの複素放射パターンを取得
【Stage2】フェージングシミュレータと接続して評価端末の受信試験

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前述した「ランダムフィールド法」のMIMO OTA測定にも対応することができます。

ここまで実環境に近づけた無線評価方法をご紹介いたしました。
4G通信となり通信の高速化が進んでいます。携帯電話の無線性能評価は、より身近な通信速度(スループット)という指標が追加され、より皆さんが体感できる評価へ変わってきました。快適な通信を確保するためにも無線評価は非常に大切なのです。

マイクロウェーブファクトリー社では、ここでご紹介したOTA計測業務を請け負っております。計測業務委託、電波暗室レンタル、見学、計測系の設計等ございましたら、お気軽にお声を掛けてください。

また、7月24日(金)に、これまでClub-Zでご紹介した内容などを体験いただけるセミナの開催を予定しています。

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この記事でご紹介した、OTAの暗室など、
八王子TEST Lab設備もご覧になれますので、ぜひご参加ください。


マイクロウェーブファクトリー社 LinkIconhttp://www.mwf.co.jp/

※参考文献
【1】櫻井,小林,北野 “マルチアンテナを搭載した端末のMIMO OTA Throughput評価,”ソサイエティ大会,2012年,B-1-221,富山大学
【2】Agilent “MIMOの基礎とMIMO受信機の性能試験”5991-0671JAJP,Published in Japan, June 13 ,2012

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