基板と熱設計

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更新日 2016-01-20 | 作成日 2007-12-03


☑基板と熱設計

19. 設計の楽しみ方

株式会社ジィーサス

2012.09.27

これまでの文章で私は何度か「世の中に貢献できる製品」と書きましたが、メーカの存続意義は「世の中に貢献できる製品の提供を続けること」ですよね? これを管理職から一般設計者までちゃんと認識しているでしょうか? そしてその製品は複数技術の最適化で成り立つことも理解しているのでしょうか? 技術の最適化って個別技術の専門家が集まって話し合ったからといって実現できるのではなく、製品設計者が「この機能を実現するにはこれとこれの技術が必要」とか、「ここは信号レベルが低いから発熱するけどリニアレギュレータを使おう」というように、複数の技術の事情を知って組み合わせを考え、それが可能かどうかを検証しながら進めて実現できるものです。なにも一人で複数の技術知識を有する必要がある、と言っているのではありません。もちろんそれに越したことはありませんが、「周辺技術の事情を知っている」だけで十分だと思います。

組織間に鉄壁を作るのではなく、植木ぐらいの境界にしておいて、たまには隣の芝生で一緒にランチを楽しむ程度の交流が必要なだけです。「機械屋に回路知識はいらない」というのではなく、「この製品の回路ってこういう繋がりだから、その順に部品が並ぶと効率的」とか、「ここにFPCを使うとノイズ源になるから、スタッキングコネクタで接続できる構造にしよう」という程度の周辺事情が分かった設計ができることが重要なのです。

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昔はよく「気の利いた設計をしろ」と言われましたが、気を利かすために相手の状況を把握する、という気遣いが設計にも必要なだけです。この気遣いができるようになれば、熱とかEMCといった複数部門に共通の技術課題を忘れることなく、構想段階から検討内容に自然に取り込むことが可能になります。また複数人が必要と感じる情報は、共有データベースという形で情報管理が進むことにもなります。会社全体で必要と感じれば、それなりのシステムを構築することになり、これがそのメーカの基盤技術として受け継がれるようになれば、「世の中に貢献できる製品」の実現が容易になるのではないでしょうか?
私が子供のころは「ラジコン」や「エレキット」などが流行っていました。その模型好き少年や電子工作好き少年が大学生ぐらいになると、模型だけでなくプロポ(コントローラ)も自作するとか、基板だけでなく筐体も本格的に作るとか、とにかくモノを作るために必要なことは何でもやりましたし、調べました。その発展性というか、技術の繋がりが面白くて深入りし、挙句の果てにメーカに就職するという流れが多かったと思います。

私自身は冒頭に書いたように、目的もなく就職してしまいましたが、実はいま、もう定年まであと何年という時期に熱だけでなく周辺技術にハマっています。熱はエネルギーそのものなので、学問的にも設計するにも難しいですが、たとえば熱伝導は格子振動なので固体物理学が必要だし、一方で熱問題の対象として扱う半導体の漏れ電流の原理なども、同じ固体物理学が関係します。そんなことを調べていると難しい数式が出てきますが、今頃になってやっと∇とかΔとかの本当の意味が分かってきたりして面白いのです。

それからThermoSherpaのプログラムを作るので、いままでBASICぐらいしか知らなかったのに、この年でC#を勉強したりするのも面白いですし、何と言ってもこのメルマガのように、自分の考えを多数の人にブロードキャストするという経験も面白くてしょうがないのです。なぜいろんなことをやって面白いのかというと、手段はどうあれ、無いものを自分の手で作るという「モノづくり」の楽しさがどこにでもあるからなのだと思います。

納期が迫っているのに図面が描けないで悶々としているあなた、ちょっと息抜きに隣の部署の人と熱問題について語ってみてはどうですか? なに?きっかけがない? それならこのメルマガでも紹介してみてはどうでしょう? 話したけど対策が見つからない? それなら私に連絡ください。なんとかします。




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●執筆者プロフィール
藤田 哲也
1981年沖電気工業(株)入社。無線伝送装置の実装設計、有線伝送装置の実装設計、および取りまとめを経て、2002年(株)ジィーサス入社。熱設計・EMC設計・実装技術のコンサルティングや教育に従事。2008年から回路・基板・実装に必要なトータル技術を提供する設計サービスに従事している。



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