2ヵ月後
。
スクランブル体制で臨んだ設計変更だったが、やはり量産計画には間に合わず、リリースは当初の予定よりも1ヶ月遅れた。
(細川) 「あー疲れた。またお前の尻拭いでヘトヘトになった。」
(狭間) 「そんなー!でも無理っすよ、今回は電気的な検証はちゃんとやりましたが、製品すべての問題箇所を想定するなんて限界があります。」
(細川) 「ま、確かにエレキの3D-CADっていうのは聞いたことがないけど、2Dデータから3Dの中間フォーマットに出して、メカCADに取り込むようなことは出来るみたいだぜ。」
(狭間) 「へー。それでいいじゃないですか。課長に相談してみましょうよ。」
(細川) 「あー。んー。そーだなー。」
そんな会話をしていたところ、怪しげな笑みを浮かべて、谷川課長が二人に近づいてきた。
(谷川) 「狭間くん、
ちょっといいですか?
」
(狭間) 「ぼくですか?」
(谷川) 「そうですよ。会議室に来てください。」
細川はスッと席を立ち、その場から立ち去った。
狭間は少し不審に思ったが、言われるままに、谷川の後ろをただついて歩いた。
(谷川) 「狭間くん、君も先日の製品開発で痛い目にあったと思いますが、今、機構設計部門と我々との意思疎通が原因で、様々な問題が発生しているんですね。相次ぐリリース遅延は、経営層にも問題視され始め、今回、その主要因であるエレメカの干渉問題について、会社全体で取り組んでいくことになったんですよ。」
(狭間) 「おー!そうですか!サッスガ!ちょうど細川さんとも谷川課長に話をしようっていうことになってたんですよ。」
(谷川) 「うんうん、そうですかそうですか。」
(狭間) 「そういうことなら話が早いので、細川さんも呼んで来ますね。ちょうど一段落しているみたいでしたから。」
狭間は、この場に細川を呼びたくて仕方なかった。しかし・・・
(谷川) 「いや、まあお待ちなさい、狭間くん。君は、どうしたら干渉問題が減ると思いますか?」
(狭間) 「それは・・・さっき細川さんと話していたんですけど、相互の設計データを連携することから始めたらよいと思いますよ。変更があってもすぐに情報が伝われば、コミュニケーションエラーによる問題は解決されるでしょう。」
(谷川) 「ふむふむ、なるほどね~。」
(狭間) 「えぇ。・・・(ムム!しまった!!)」
(谷川) 「君、やってみませんか?」
(狭間) 「(
ガビ~~ン
)」
(谷川) 「10月からスタートしますよ!君はもう4年目だし、回路の事なら一通りマスターしてるはずです。」
(狭間) 「いえ、そんな・・・」
(谷川) 「私も大変心苦しいのですが、全体を見渡せる仕事ですから、君にとってはステップアップのチャンスですよ!技管の大泉課長も君の事を頼りにしているみたいですよ!」
(狭間) 「技管ですか?」
(谷川) 「はい。今回の取組は技管主導で行うことになっていますよ。期間限定です。皆の期待に応えて、成果を残すよう、頑張ってきなさい!」
(狭間) 「・・・わかりました。(ってなぜ僕なんだーーー)」
仕組まれていたであろう出来レースに、分かっちゃいるけど断れない狭間は、10月より技術管理に異動することになった。 |