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加速するデジタルトランスフォーメーション(DX)と図研の新たな取り組み

図研グループの事業運営について

今こそ図研の
ダイナミック・ケイパビリティを発揮

取締役副社長
相馬 粛一
SOUMA YOSHIKAZU

自動車、通信、産業機械など幅広い分野での技術革新のトレンドをうけて堅調だった市場環境が、期末にかけて新型コロナウイルスの感染拡大により突如一転して先行き不透明な状況に陥ってしまいました。ポストコロナを見据えた図研の今後の事業運営に変化はあるのでしょうか。現在のビジネス環境をどう見ているのでしょうか。

今回の緊急事態宣言は、年度末から期初というお客様にとっても図研にとっても大変重要な時期に発令され、私たちは突如対応を迫られることになりました。言わば、相当厳しい「抜き打ちテスト」のようなものでした。新製品開発というお客様の大変重要な基幹業務を、この状況の中でもしっかり途切れることなく支えていくこと、また同時にお客様、従業員やビジネスパートナーの皆様の安全を確保して事業を継続すること、どちらも妥協が許されない中で、トップから各部門の社員一人ひとりが一丸となってその役割を果たし、この緊急事態に対応しました。いろいろな課題もありましたが「抜き打ちテスト」の第一段階はパスできたと考えています。

ただ、今回の新型コロナウイルスの影響が沈静化したとしても、製造業の企業行動に恒久的な変化が表れるでしょう。当然図研の事業活動もそれに合わせて変化していかなくてはなりません。新たな顧客とのつながり方(エンゲージメント)はどうあるべきか、私たち自身の働き方がどうあるべきか、これからの新常態(ニューノーマル)の中でお客様が必要とするソリューションやサービスを提供できるか、こうした問題に対してすでに社内で議論を重ねており今後スピーディに具体的なかたちにしていきます。図研の「ダイナミック・ケイパビリティ」が試されるときだと考えています。

私たちを取り巻くビジネス環境はしばらく予断を許さない状況です。しかし、今回のコロナウイルス感染拡大以前から存在するさまざまな技術革新の流れはどれも大きな社会の要請を背景にしたものであり、決してなくなるものではありません。むしろ今回の影響によってデジタルトランスフォーメーションへのニーズがあらゆる面でさらに高まると考えています。一時的な停滞はあるとしても、遠からず元の軌道に戻り、より加速されていくでしょう。図研はグループ全体でお客様が一日も早く体制を立て直し、さらに力強いモノづくりを実現できるように全力で支援していきます。

※ ダイナミック・ケイパビリティ:環境変化に対応するために、組織内外の経営資源を再結合・再構成する経営者や組織の能力。カリフォルニア大学ビジネススクール教授 デイヴィッド・J・ティース氏の戦略経営論で提唱された用語。

開発・サポート体制について

お客様の
新常態での製品開発を支えていく

専務取締役 技術本部長
仮屋 和浩
KARIYA KAZUHIRO

図研の開発・サポート業務は、日本だけでなくグローバルなチームの緊密な連携で行われています。今回の新型コロナウイルスの感染拡大によってどのような影響を受けたのでしょうか。

結果として、今回の緊急事態に対しては非常にスムーズに適応することができました。顧客サポートを含む技術部門は、日本の全国緊急事態宣言(4月16日)の時点で85%がテレワークによる業務に移行を完了しました。もともと海外開発拠点やオフショアパートナー、協力会社などとの連携で開発を行う必要性からセキュリティを担保してリモートで開発する仕組みができていたことで迅速な対応につながりました。

顧客へのサポート体制は、2011年の時点で海外を含む図研の全拠点が「Zuken Global Support」(図研のユーザサポート用のポータルサイト)でのWebを介したサポート業務を開始しており、日本語・英語でのグローバルな情報交換・共有が可能となっていました。今回の緊急事態宣言後、電話対応を休止してWebでの問い合わせに集約しましたが、問題なく業務を継続することができています。また、混乱の真っ最中ともいえる3月末、4月に実施するグローバルな定期的バージョンアップや新規機能に関する情報提供も問題なく完了することができました。

ポストコロナの新常態の中でお客様から求められるソリューションやサービス提供の方針について教えてください。

もとより当社製品はリモート環境での運用に対応できていましたが、顧客のサプライチェーンの多くは、グローバルに分散しかつ外部企業と連携しています。今後は、そのようなグローバルなエコシステムの中で図研ユーザが何の不便もなく(オフィスにいるのと同等以上に)社内外と連携してスムーズな電子機器設計製造の業務ができるようなサービスやソリューション、それに対応する新たなライセンス運用形態や仕組みなどの提供を強化していきたいと考えています。

図研は、エレクトロニクス設計製造のプロセスを部品選定から製造準備までカバーするデータ管理ソリューション(EDM/PDM/PLM)を持っています。このソリューションが提供する機能はエンジニアのリモートワークにおいても大きな役割を果たします。なぜなら、分散したエコシステムで設計製造を行うには、部品情報や設計成果物、企業間で授受するデータのマネジメントが必須だからです。今回私たちのお客様が苦労したのはむしろここであり、この領域で図研のソリューションの進化と革新が顧客エンジニアの働き方改革の力になれると思います。

営業活動について

デジタルで変えていく
お客様とのエンゲージメント

専務取締役 事業本部長
上野 泰生
UENO YASUO

新型コロナウイルスの感染拡大による外出自粛要請が直接的に一番影響を与えたのは営業活動です。対面でのお客様とのコミュニケーションが難しい状況でした。徐々に正常化しつつあるとはいえ、社会全体としていろいろな場面で、これまでとは違う基準でのコミュニケーションが求められ始めています。今後のお客様とのつながり方に変化が起きるでしょうか。

図研のソリューションは店で買ってきて箱を開けたらすぐ使えるという商品ではありません。導入いただくまでには、お客様との非常に深い双方向のコミュニケーションが必須。図研の強さは、まさにこの丁寧で深いコミュニケーションを通じてそれぞれのお客様に最適なソリューションが提案できることだと考えています。今回の新型コロナウイルス感染拡大の経験を踏まえ、顧客と図研のコミュニケーション(エンゲージメント)において、より対面を前提としないやり方が増えていくでしょう。お客様も図研も、今しばらくは少し不便を感じつつも、さまざまなデジタル技術を通じた非対面のコミュニケーションに多くのメリットも感じ始めています。

今回のコロナ禍を契機に図研は、図研ならではのデジタルな顧客(個客)とのエンゲージメントの方法を新たに導入します。これは、他企業がすぐにまねのできるようなものではありません。多くのBtoB企業同様これまで対面での深いコミュニケーションが営業活動の中心であった図研にとって、特に国内事業において大きな変革となるでしょう。業務プロセスの非対面化、「デジタライズ」という面から言えば、当社においても欧米の営業プロセスは日本より先行しています。ただ、それをそのまま日本に導入することはしません。その先例も参考にしながら国内では、図研の強さを活かせる独自の「デジタル」コミュニケーションのプラットフォームを新たに構築していきます。(1対多の)画一的、標準的になりがちなデジタルコミュニケーションを、「個」客に徹底的にチューニングするため、さまざまな工夫を盛り込んでいきたいと考えています。

このプラットフォームにおいては、私たちがECサイトやニュースサイトなどで経験する、過去の参照履歴や登録されている属性情報などから類推したコンテンツを自動提示するだけではありません。むしろ、お客様の現状を把握している担当営業が自らコンテンツを選んで配置し、検討を支援する部分が重要と考えています。あくまで1対1のエンゲージメントを実現するメディアにしていきたいのです。もちろん、デジタルならではのメリットであるスピーディなデータの分析やその反映などを通して、アナログ以上にユーザにメリットを提供していけると考えています。そして、時間や地理的な制約を受けずに効率的に、より多くのお客様との接点を広げていきたいです。