図研 from Z Vol.14
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ないかと思ったくらいです(笑)」このとき尾崎教授が発見したのが窒素・ホウ素ドープ系と呼ばれるカーボンアロイ触媒だ。ユニークなのは窒素とホウ素という相反する電荷を持つ元素を同時にドープ※1した点で、従来はお互い中和して効果がなくなるだろうと言われていた。「半導体の説明になりますが、n型半導体とp型半導体というものがあり、それぞれn型のときは窒素をシリコンの中に入れ、p型のときはホウ素を入れるんです。ならば両方を一遍に入れたら何が起こるのか? 何も起こらないだろうと考えるのが普通ですし、入れる手法も簡単ではない。でも、どうなるかやってみようと試してみたら意外な結果が出たわけです。化学というのは何でもやってみないとわからない。1+1が常に2になるとは限らない世界なんです」だが、あまりに革新的な発見だったこともあり、当初は思いがけない苦労もあったという。「学会で発表するとなると、なぜ活性が上がったのか説明できる理由が必要なんです。通常の何もしていないカーボンと比べて、より高い電流が実際に流れるのは確認できても『なぜそうなるのか?』という話になる。そこは辛かったですね。何よりも錬金術ではありませんが、白金の代わりになるというとそれだけで眉唾だと思う人もいる。そういう話は後になっていろいろ聞こえてきましたし、信じてくれない人もいました」尾崎教授は東北大学時代、既に中空構造を持つナノシェル系カーボンアロイ触媒を発見している。ナノシェル系と窒素・ホウ素ドープ系。現在、燃料電池の触媒としては、この2つのカーボンアロイ触媒を掛け合わせて研究が進められている。カーボンアロイ触媒の具体的な製品化に向けては、2007年頃から日清紡ホールディングス株式会社(以下、日清紡HD)と共同で開発を進めている。これは元々、尾崎教授が所属している炭素材料学会の幹事に日清紡HDの社員がいたのがきっかけだ。日清紡HDを中核会社とする日清紡グループは、「環境・エネルギーカンパニー」として燃料電池分野の素材に関する研究および事業を行っている。主たる製品は、燃料電池用カーボンセパレータであり、その製造・販売を行い、これは家庭用燃料電池(エネファーム)にも適用されている。「我々が見つけ、作った素材を具体的な製品化に向けて作り込んでいくのが日清紡HDさんの領域です。基礎と応用で、まさに両輪といったイメージ。まずこちらが基礎を回すと、あちらが応用で回してくる。それに応えてこちらがまた回して坂道を上がっていくイメージですね。あちらから頻繁に研究者が来られて、うちで実験してその結果を話し合ったりします。また、うちの特任教授も含めてさまざまなデータの解析やミーティングを行っています。企業の人はスピード感がありますね。こちらは大学院生などに任せているので、授業を優先してしまうのですが、あちらは非常にレスポンスが早い。実はうちの卒業生がひとり先方にいるんですよ。女子学生ですが、今でもよくうちに来て実験しては『先生、こうなんですけど?』なんて気軽に言ってきます。私も相手が学製品化に向け、日清紡HDと共同開発※1 結晶の物性を変化させるために少量の不純物を添加すること。写真上はカーボンの構造モデル。中央がグラファイト、右はダイヤモンド、左はフラーレン(炭素原子からなるクラスターの総称)。写真下は研究室にある多彩なカーボンの数々。試作のスプリングは恐ろしく軽量だが「実は引っ張りには弱い」(尾崎教授)とも。7from Z_Vol.14_2014

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