図研 from Z Vol.14
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Interview「もともと“電気を通すもの”が、すごく好きだったんです。電気を通すというのはどういうことなのか? それがこの道にきたきっかけです。高校の時、先生が『ガラスやプラスチックなど透明なものは電気を通さないだろう?』と教えてくれたのですが、ピカピカに光っている金属は電気を通す。不思議でしたね。東北大学に入ってからも『電気を通すプラスチックはないのか?』と考え続けました。ちょうどその頃、後にノーベル化学賞を受賞した白川英樹先生達が『合成金属ーポリアセチレンからグラファイトまでー』という本を書いていて、この『合成金属って何だ?』と調べてみると、どうも電気を通すプラスチックについて研究していたようなんですね。そういう事を自分で調べながら大学の研究室に進みました」尾崎教授が研究室で最初に取り組んだのが触媒だった。当時は日本がちょうど石油ショックから立ち直ってきた頃。『石炭をもう一度見直そう』と、固体である石炭をガスやガソリンのような流体燃料にするという取り組みが積極的になされた時期だった。尾崎教授に与えられたテーマは“触媒を使って石炭を一酸化炭素と水素に分けよ”というもの。そこが石炭=カーボンとの本格的な取り組みの始まりとなった。「カーボンは、こんなにきれいなのか。もしかしたら、電気を通すかもしれない。そう考えて調べていくと、今度はグラファイトという非常に金属に近い炭素に行き当たる。 また、専門書を読んでいくと、摂氏1,000度以下で作ったカーボンは半導体的な性質を示すという話があり、ならばシリコンもゲルマニウムも全部同属の元素だからカーボンもそうなるのでは? と、どんどん進むわけです。これは面白い、博士課程に行ってもっと研究してみようということになりました。電気を流してくれるところ、機能性のあるところ、そして後々ですが触媒的な特性を備え、化学反応するものに心惹かれたのです」その後、東北大学からカーボンの研究に実績を持つ群馬大学に籍を移すことになる。「元々、カーボンで半導体のようなことをやってみたいと思っていたのですが、根が化学屋なので化学反応がないと面白くない。我々は常に何か面白い形や結晶構造を持ったカーボンを作っていきたいと研究していますが、カーボンに電気化学的なすごくいい特性があるということは分かっていたんです。群馬大学に来て、研究室の大谷杉郎先生や大谷朝男先生に『なんかこれ、面白いんですけどどうしましょうかね? 触媒活性はあるんです』と相談したら、『ならばそのカーボンを燃料電池に使ってみなさい。燃料電池はこれからの分野だよ』と言ってくれた。そして、調べていくと面白い結果が出てきた。これが1998年頃のことです。まだ2000年にはなっていませんでしたね。ちょうどその頃から固体高分子学の燃料電池というのが国家プロジェクトとして動き始めるという話を聞いていた――そんな時期でした」実験を繰り返すにつれてカーボンの活性は上がり、触媒としての可能性をさらに高めていく。「その過程はもう面白くて仕方なかったですよ。当時、私はまだ実験室に入っている人間だったので、3ヶ月ぐらいかけて測定法を開発し確認して、学生達にテーマとして渡した。そうすると彼らは『先生、今日はこの実験をやってみました』といろいろトライする。その度に活性が上がる。今度は『この活性が発現するのはこういう理由なのでは?』と考えて実験してみると確かにまた活性が上がる。あれは非常に楽しい時間でした。あの時はうちの実験室、カーボンのマジシャンじゃ透明なものは電気を通さない?素朴な疑問に引き込まれて炭素(カーボン)の世界へ

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