図研 from Z Vol.14
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Interview2013年11月、トヨタ、そしてホンダが相次いで燃料電池車を公開、2015年の市販を発表し話題を集めた。ハイブリッド車、電気自動車に続いて市場投入が待たれる燃料電池車は、水素と酸素を化合することで電気エネルギーを発生させモーターを駆動、排出するのは水のみという“究極のエコカー”として注目されている。背景には2011年1月13日に経済産業省が発表した「燃料電池自動車の国内市場導入と水素供給インフラ整備に係る民間事業者による共同声明」がある。水素を燃料とし、走行時にはCO₂を一切排出しない燃料電池車は省エネルギー・地球温暖化対策に大いに寄与するとして、自動車会社3社とエネルギー事業者10社が2015年から市場に本格導入すると声明したのだ。自動車だけではない。エネファームと総称される家庭用定置式燃料電池など、いまや燃料電池は人々の生活に身近なものとなりつつある。とはいえ、次世代エネルギーとして期待が高まる燃料電池にも課題はある。燃料となる水素を取り出すための触媒に希少金属である“白金”を使うためコストが高く、普及への足枷となっているのだ。産出量も少ない。そういった中、白金に代わる触媒として注目されているのが、群馬大学、尾崎純一教授が発見したカーボンアロイ触媒である。群馬大学工学部の研究室(現“尾崎純一研究室”)は、60年前の1953年から炭素を専門に研究を続けている国内でも有数の研究室だ。尾崎教授で3代目にあたり、現在は文部科学省のアドバンストカーボン構造・機能解析研究拠点に認定もされている。東北大学工学部化学系学科に学んだ尾崎教授は1997年に群馬大学に移籍。一貫して炭素、カーボンの研究を続け、炭素材料学会の運営委員長も務める“炭素の第一人者”である。「カーボンを使って世の中を動かすような面白いことをやってみたい。それが私の原点です。今、低炭素社会というのがひとつのキーワードになっていますが、この場合の炭素というのは二酸化炭素のことで、その排出量を抑えようという話。背反的な表現になりますが、我々は炭素(カーボン)を使った低炭素な社会、すなわち水素社会を目指しています。水素を使った燃料電池との関わりはそこにあります」天然ガスや石油、ガソリンに代表される化石燃料に代わるエネルギー候補として、尾崎教授は水素に着目した。エネルギー効率に優れ、燃やしても排出するのは水のみ、爆発エネルギーも大きい。水素がクリーンエネルギーとして高い可能性を持っていることは明白だった。一方、水素は純物質としては自然界に存在せず、水や石油から取り出す必要がある。またその性質上、保管も容易ではない。水素をつくる、ためる、つかう――クリーンな低炭素社会を実現するため、尾崎教授はこの3つの課題にカーボンを使って取り組んでいるのだ。炭素(カーボン)を使って低炭素社会を目指す極めて小さなナノシェル(中空の球状)構造を持つカーボンアロイ。ひとつのシェルの直径は10~50nm(ナノメートル=10億分の1メートル)ほど。日清紡HDはカーボンアロイ触媒を使った燃料電池で走る模型電車を公開している。ここで使われている燃料電池の出力は約10W。加速する燃料電池開発提供:日清紡ホールディングス5from Z_Vol.14_2014

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