図研 from Z Vol.14
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鮮魚流通の“Amazon.com”を目指す「八はちめんろっぴ面六臂」が挑戦する新ビジネスモデル3兆円規模ともいわれる鮮魚流通業界。日本が世界に誇る流通構造だが、旧態依然としたシステムが根強く、従事者の高齢化も進み、業界には停滞感も漂うという。そんな中、ITと流通技術を武器に切り込んだのが「八面六臂」だ。2013年10月にはベンチャーキャピタルなどから総額1億5000万円もの第三者割当増資を実施し、業績を伸ばしている。鮮魚流通の常識を覆した戦略とは何か? 新しいビジネスモデルを追った。「八面六臂」は、最新のITと流通技術で全国各地の鮮魚を飲食店舗に販売するITベンチャーだ。同社が、iPadで鮮魚を発注できる“八面六臂TMアプリ”を開発したのは2010年9月のこと。注目すべきは、アプリを配信しただけでなく、インストールしたiPadごと無料で貸与した点にある。「料理人が食材を発注する際、その9割は電話やFaxなどのアナログ方式でした。でも、ITと言うだけで強い拒否反応を示す“IT嫌い”の人たちも、実はスマートフォンを持ち、既にITを使っていたりする。だから、スマートデバイスは鮮魚流通に革命を起こせると確信しました」(八面六臂株式会社 代表取締役 松田雅也氏)このアプリには、全国の漁師、産地市場、築地市場から収集した鮮魚情報が登録され、日々更新される。料理人は魚の種類やサイズ、産地、価格を確認したら、欲しい分量などを入力すれば発注完了、実に簡単だ。ただし、鮮魚に関わるすべての人がスマートデバイスに慣れ親しんでいるとは限らない。そこで、アナログも否定せずに、キータッチ以外に“手書き入力”機能を付け、電話やFaxでの発注も受け付ける。発注の間口が広いだけでなく、選べる鮮魚の種類が豊富、さらには鮮魚の画像を見ながら発注できることが魅力となり、サービス開始3年で約300店舗がアプリを導入した。2014年は1,000店舗を達成する見込みだ。ITの次は“流通技術”。これまで鮮魚の流通は、漁師→産地市場→築地市場→納品業者→飲食店舗→消費者という流れが主だった。だが、八面六臂は漁師・市場産地・築地市場の各プレイヤーと自由に連携する“ハイブリッド流通”を採用し、多彩な鮮魚を安定して購入できるルートを確保した。これにより、“海の時しけ化で鮮魚が獲れなかった”というようなリスクを回避できるほか、店舗の多岐にわたるニーズや、その日の予約状況に応じた“数十グラムや本数単位”の極小ロットの発注にも対応。また、漁獲高が少なすぎて現地でしか見ないような珍しい魚介類も取り扱うという。さらに、同社の強みとしては “魚に関するすべての情報をデータベース化した”ことが挙げられる。一般的に、鮮魚の質や鮮度の高さを見分ける“目利き”の腕は、長年の経験に基づいた知識や勘が必要とされていた。だが、共通のマニュアルにしたことで、入社数ヵ月の社員でも、ベテランの料理人と対等に会話し、説得力のある営業活動を行えるようになったという。こうしたアプリ&プラットフォームの組み合わせで鮮魚流通の需要と供給を最適化した八面六臂は、人件費や物流費用などのムダなコストを削減することに成功。2013年10月には、ピグマリオン2号投資事業有限責任組合、Vector Group International Limited、株式会社ウインローダーを割当先とする第三者割当増資によって総額1億5,000万円を調達した。今後も意欲的だ。アプリのバージョンアップで、レシピ情報やメニュー提案、売れ筋ランキングなどのメディア機能を搭載予定。また、販売エリアも東京近郊から関東まで拡充し、ドバイなどに向けてのグローバル展開も準備中だという。和食がユネスコの無形文化遺産に登録されて注目される中、八面六臂の活躍ぶりからも目が離せなくなりそうだ。(上)八面六臂アプリの画面。直観的な操作で欲しい鮮魚を簡単に注文することができる。手書き入力への切り替えもOKだ。(中)旬の食材を提案する画面。(下)発注履歴の一覧もすぐにチェックできる。アプリは同社のAPSサービスの利用申請が必要なので一般利用はできないが、UIはAPP Storeで閲覧可能。Vol.2[ビジネス新潮流]八面六臂株式会社代表取締役松田雅也氏URL◦http://hachimenroppi.com京都大学法学部卒業。大手都銀、独立系ベンチャーキャピタルを経て、2007年5月、エナジーエージェント株式会社(現八面六臂株式会社)を設立。2011年4月から八面六臂サービス開始。19from Z_Vol.14_2014

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