図研 from Z Vol.14
17/24

たのが島田市でした。最初は市民も市長よくぞ言ったと肯定的だったのですが、岩手県のがれきを受け入れることになった際、ごく微量の放射性セシウムががれきから検出されたんです。その量は1キロあたり最大で13ベクレル、平均では1キロあたり2ベクレルでした。これは世界食糧計画(WFP)が定める飲んでも大丈夫な安全基準1リットルあたり100ベクレルと比較すれば、まったく問題にならない量なんです。 ただ、放射性セシウムが付いていることも事実です。そのため市民からがれき受け入れ絶対反対という声が上がった。私の大学の専攻が原子核物理だったことから、中学時代の同級生の女性から「助けて欲しい」と電話をもらいました。実際に2012年2月に島田市に行ったのですが、お母さんたちは島田市は死の町になるから移住するとか、尿から1リットルあたり0.5ベクレルの放射性セシウムが検出されたからこの子は死ぬんだと泣いているという話を聞きました。 放射線に関する教育なんて学校でやらないから、なんだか『怖い』という感情は仕方がないのです。感情的になっている人たちは聞く耳を持たず、絶対反対しか言わない。これを解決するには教育しかないと考え、島田市の教育委員長のところに行き、市の小学校中学校で放射線教育を義務化すべきと訴えたのです。放射線について、ここまでは安全、ここからここまではグレーゾーン、ここからは危険と科学的根拠をもって説明しました。こういうことを子供たちが分かってくれればいいと思い、200人くらいの先生を相手に研修会をやり、理科の先生を中心に学習指導要領を作成してもらい、2012年の秋からモデル授業などもやって改善しながら指導要領を確定しました。小学校4、5、6年、中学校1、2、3年は、1年間に5時間ほど放射線授業を受けるようにしました。 指導の中では、がれきについて賛成や反対などの偏った意見は絶対に言わないようにして、先生から放射線に関する科学的な事実をわかりやすく説明してもらいました。モデル授業を見に行ったのですが、子供らは目を輝かせて授業を聞いて、「よかった。うちに帰ったらお母さんに教えてあげるんだ」と話していました。私はこれを静岡全体に広め、10年以内に文科省に高校大学の入試科目として放射線学を設けさせようという目標を持っています。仮屋 事実を正確に知る、ということは重要ですね。学校教育ということでは、日本は国語算数理科社会偏重型ですよね。もちろん大事なんですが、その後に図画工作とか美術、体育がきます。受験科目でもないし。でも、図画工作や美術がモノづくりに繋がっていたりするわけです。私は体育会系でしたがスポーツを通して学ぶことも多く、日本のモノづくりの将来を考える上で、教育は本当に重要だと思います。湯之上 理系、文系という区分にも問題があります。私は42歳になってから日立を辞めて、理系から文系に転身して突然経営学の教員になりました。高校の途中で文系や理系に分かれたら、ほとんどの人は一生文系、理系なわけですが、これが不幸の始まりですよ(笑)。この理系・文系の垣根も外したい。 さきほど仮屋さんが自分の担当しているモノしか知らない人が多いという話をされましたが、これが理系人間の特質です。そういう人が偉くなって会社経営を任されてもできません。文系と理系を行ったり来たりできたり、理系でも経営学と経済学を必須にするというようなことが必要なんじゃないでしょうか。長岡技術科学大学にいたとき、外資系の半導体企業数社から博士課程のエースをマーケティング要員として欲しいと言われました。いまや技術を売りにしている会社はマーケティングをするにしてもセールスをするにしても、理工系のセンスがないとできないのです。文系の学生に工学を教育するより、理工系の学生に文系のセンスを与える方が効率的だと言っていました。理工系博士号を持ったエース学生がマーケ日本のモノづくりの復活はニッチストロングから17from Z_Vol.14_2014

元のページ 

10秒後に元のページに移動します

※このページを正しく表示するにはFlashPlayer10.2以上が必要です