図研 from Z Vol.14
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すると、ある程度全体が見えていないと難しいですよね。分業が定着したために、自分の担当範囲に手一杯で、周りと関連づけながら全体を変化させていけるような人がかなり減っている気がします。商品についても自分が作っている製品の機能や品質を上げることばかりに集中して、電子機器全体がどこへ行くかといったことに考えが及ばない人が多いように思います。 この状況を変えるためには、ずっと分業形態の中で育ってきた従来のエンジニアや担当者に、いきなり今までのやり方を変えてどうすればよくなるか考えろと言っても無理で、これまでのやり方、考え方に縛られていない20代、30代の若手がのびのび活躍し、もっと輝ける企業風土を作ることで、イノベーションも起こせるのではないでしょうか。湯之上 そうですね。20代、30代の若手がもっと権限を持っていい。だって世界のIT企業のトップってみんな若いじゃないですか。みんな40代、下手すると30代。日本のモノづくり復活のための組織や環境づくりが必要なのですが、これにはこれまでの日本の教育システムを変えなくてはなりません。 私は長岡技術科学大学に客員教授として7年くらい勤めましたが、修士の学生を卒業させるのにすごく悩みました。学生にこの論文レベルではとても修士はあげられないというと、親が出てくる。学長に呼ばれてあなたの仕事は修士の学生をちゃんと卒業させることだと言われました。これについて、東芝からヒューレット・パッカードやテキサス・インスツルメンツを経てスタンフォード大学に行かれた西義雄教授という半導体業界では有名な先生に、どのような方針で学生を指導しているのか、一昨年機会を得て尋ねてみました。 西先生がおっしゃるには「湯之上君、企業や国を見てごらん。どこでも一握りのトップが引っ張っているんだよ。トップになる人間が必要だ。ただし、日本もアメリカもトップになれる人間は少ない。スタンフォード大の教育方針は、トップにフォーカスを当てている。トップになれる人間に教えるのではなく、トップとして育つようにサポートするんだ。専任の教授も三人付いて、多面的なアドバイスが得られるシステムになっている。トップがトップとして育つ環境を作ってやるのだ」と。これを聞いて日本と全く違うと思いました。こうして育ったトップ人材の中から、とんでもないイノベーターになる人間が出るのではないかと思ったのです。 日本の教育は飛び抜けたやつは引っこ抜いたり叩いたりして均質化・平均化してきました。しかし飛び抜けたトップが伸びる環境さえ用意すれば、均質的で質の高い労働力はあるわけですから、日本の高い潜在能力が活きてくると思います。仮屋 日本は学校でも会社でも平均点社会ですよね。ある決まったモノをみんなで作りましょうという時にはとてもいいのですが、何を作ればいいか探してくださいといった時には、具合が悪いですよね。 過去の成功体験に縛られていることもあって、なかなか斬新なアイデアが出てこない。やはり、若手が活躍できる組織風土づくりが重要ですね。当社の新製品「CR-8000」もタッチパッドでの新しい操作や、3Dを活用したグラフィックス表現など最先端のIT技術を導入しているので、スマートフォンや3Dのコンピュータゲームを体感して育った若い技術者はすぐに使い勝手の良さを肌で感じてくれるのですが、ベテランがなかなか評価してくれない(笑)。湯之上 若手の中の若手、ということで、実は今、小学校の教育に関わっています。 私の出身は静岡県島田市という人口10万ほどの街なのですが、3.11の大震災の後のがれき広域処理問題で、東京都以外で一番先に手を上げ将来を見据えた「教育改革」の必要性Conversation

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