図研 from Z Vol.14
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仮屋 湯之上さんが2013年10月に上梓された『日本型モノづくりの敗北 - 零戦・半導体・テレビ』(文春新書)がアマゾンでビジネス書のランキング1位になるなど売れ行き好調とのこと、おめでとうございます。この本の反響がすごくて、国会議員の前で講演されたり、半導体業界のみならず予想外の業種の企業からの講演依頼もあるそうですね。湯之上 国会の政策会議に呼ばれて講演しました(参考 http://yunogami.net/webronza/131113.html)。さらにその後で呼んでくれた議員の「朝会」でも講演しました。朝会は10人か20人くらいだと思っていたら200人もいて驚きました。驚いたことは他にもあって、この本を出して最初の講演依頼は、半導体とは全く異業種の日本毛織(ニッケ)からだったことです。毛織物の話なんて全く書いてないのですが、社長が私の本を読み、組織や業界構造が自社によく似ているということでした。他にも読んでいただいた経営者から、ここに書いたモノづくりの根幹や組織の根幹にあるものは、鉄鋼メーカやアパレルメーカにも似ているといった話も聞きました。さらには私のヨガの先生が読んでくれて、ヨガの世界も同じ「高品質病」があるのだと教えてくれました。いろいろなところに半導体業界の問題と共通することがあるようです。仮屋 図研も耳が痛いですね。うちのCADはいわゆるエンタープライズ用CADで、電子機器メーカなどの設計部門をターゲットにしています。実は、それとは違ってパソコンと変わらない値段で売られているパーソナル用CADのマーケットがあります。ソフトウェア品質も低く、製造設計まで完結するには足りない機能も多くあるのですが、設計者が個人で使って検討したり試作してみるには十分使える。中国や台湾では、これがけっこう売れています。いわゆる黒物家電は完全に大量生産の世界になってしまい、プラモデルのように製品を作れるようになりました。そういう製品設計には図研のエンタープライズ用CADはオーバスペックなのかもしれません。こういう世界はどんどん広がっていくと思い、それに対応する製品も考えなくてはいけないと感じています。高品質病ではないですが、過去に積み上げてきた詳細で豊富な機能を削ったり品質を落としたりしても、なかなか良いツールには仕上がらないですから。湯之上 作ってしまった製品のグレードダウンはできないんです。新しくゼロベースから設計しないとおそらくできません。高みにいる人は、そういう製品を安かろう悪かろうと見下してしまいますが、実は違います。グレードダウンするには、異なった考え方や新しい技術が必要だったりするのです。 本にも書きましたが、いくつもの日本のモノづくりの大企業が、クリステンセン教授の言う「イノベーションのジレンマ」によって、機能や品質は落ちるが安くて使いやすい製品を作る企業に打ちのめされました。これを再逆転するにはそうした製品作りの妨げとなる、組織の疲弊化や悪しき企業文化、過去の成功体験へのしがみつきから脱却しなければなりません。 日本人はモノを高品質に手間ひまかけて作るのが上手なんですが、これからは、何を、どうやって作るか、ということを世界な視野でしっかり考え、何もかも自前でやる発想を転換していくのが必須だと思います。日本人は自前ですべてを作りたいという気持ちが強すぎるんです。仮屋 日本の製造業では分業が進んでいるので、それもそうした新しいモノづくりを妨げているかもしれません。それぞれが担当する狭い範囲には詳しいのですが、残念ながら全体が見えていない。新しいモノを作ろうとかやり方を変えようとさまざまな業界に潜む「高品質病」のジレンマ若者が活躍できる組織風土づくりとは

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