漆陶の可能性をさらに広げ新しい食器作りに挑戦する漆陶の洋食器シリーズやメタリックな輝きが美しいグラスなど、新しい挑戦により作られた製品が続々登場している(左)美濃焼の伝統である染付のため、絵付師がひとつずつ丁寧に手描きする。現在は手描き職人が減少しているが、宗山窯ではあえて手描きの製品を多く作り、他業者と差別化している(右)貫入※が生じやすい配合の釉薬を使用し、手描きのラインや絵柄(呉須)が微妙に動くことで柔らかみのある素朴な風合いを醸す漆塗りの工程。写真は黒漆による下塗りに朱漆塗りを施す根来(赤)のもの。器を回転させながら、最初はまばらに色を置き、その後全体に塗り広げる。職人が漆の配合や塗りの厚さ、乾燥の仕方などに細心の注意を払いながら仕上げていく※貫入:素地と釉薬の収縮率の差により、焼成後の冷却時に生じた釉のひび模様のこと写真左奥に見えるのが本焼きの際に使用する窯。手前に器が並ぶ台がそのまま窯に入り、1,300℃の高温で焼成する岐阜県土岐市駄知町2315-22 ☎ 0572-59-8621営業時間 8:30~17:00 定休日 土日祝公式サイト https://www.soukichi.com/研ぎ出しの工程。写真の曙(黒)は、研磨することで下塗りの朱色が見えてくる。職人の力加減や磨く場所により変わるので、ひとつとして同じ仕上がりになることがない。購入後も、使ううちに少しずつ漆が擦り減って色合いが変わるのもこの器の魅力だ 「元々、宗山窯は伝統的な焼物を得意としてきました。しかし、3代目である父の下で修行していた頃から他業者のできないことを目指したいという想いが強くなり始め、日本古来の鮮やかな朱色を生かした“ジャパネスクシリーズ”、手描きの絵を染付にしてラインを少しにじませた“安南シリーズ”など、新しい焼物を開発してきました。15年ほど前、古くから付き合いのあった作家さんが陶器に漆を塗ることに挑戦していて、それを見て刺激を受けたのが漆陶を作るきっかけです」(若尾宗洋氏)県の木曽平沢を訪れて研究を重ねるなど、開発に情熱を注いだ。最初は水がつくと漆がはがれやすくなり、なかなかうまくいかなかったという。その後も試行錯誤を重ね、陶器として焼き上げた後に漆を塗り、温度の異なる焼き付けを数回繰り返してしっかり焼き固めることで、ようやく満足のいくクオリティの製品を作り出すことができたそうだ。商品開発の新たな道が広がった。その後、以来、漆器の生産地として名高い長野陶磁器と漆塗りの技術の確立により、発表した“つなぎシリーズ”は、志野の乳白色、織部の緑、染付の藍色という美濃焼の伝統に朱色と黒の漆塗りを施し、それぞれの世界観を金継ぎ技法によりひとつの器の中に落とし込んだデザインが目を引く。さまざまな表情を持つ日本の美を表現した斬新な器は、「美濃焼 新作展」の展示会で見事グランプリを受賞。国内はもちろん海外からも人気を得ている。漆陶の製作工程を説明すると、まずは粘土を錬るところからスタートする。磁器粘土と陶器粘土を混錬したものを使い、中の空気を抜きながら錬る。次は生地成形。動力や手でろくろを回したり、土を板状にしたりして成型したら素焼きする。その後、職人が手作業で絵付けを施し、釉薬をかける。施釉することで硬度が増し、焼物に色つやと光沢が生まれる。窯詰めして本焼きをしたら、いよいよ漆塗りの工程だ。上塗り、下塗りをした後、焼き付けや研ぎ出しの工程を経て完成する。(Negoro)」ならば太陽が周りを明るく照らす出 来 上 が った 漆 陶 は、 朱 色 の「 根 来ようなパワーを感じ、黒の中にかすかに赤い線が見え隠れする「曙(Akebono)」は、闇から光がさすようなドラマチックな仕上がりだ。持つと、漆のしっとりとした手触りが実に心地よい。「ふとした好奇心から生まれた漆陶でしたが、ろくろ師、絵付師、漆職人のそれぞれの技術の高さにより、これまでにない日本の伝統美を盛り込んだ新しいものができたと自負しています。木製の漆器とは異なり、電子レンジの使用にも耐えうる実用性も兼ね備えています。多彩さが魅力の美濃焼ですが、その多くの中で淘汰されずに生き残っていきたい。そして、受け継いだ伝統的な技を守りつつもそればかりにこだわらず常に新しさを打ち出す、魅力的な焼物を作り続けたいです」(若尾氏)宗山窯では今、洋食器に漆や螺鈿、蒔絵などを施す新たなラインの開発に取り組んでいるという。今後、どんな発想の器を作り出し、私たちの目を楽しませてくれるのか、期待したい。宗山窯25from Z_Vol.35_2025
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