―漆陶―美濃焼と漆のふたつの伝統が織り成す美1300年もの歴史を持つ美濃焼に、伝統的な漆塗りを施すことで生まれた新たな器「漆陶(Shittou)」。どのように作られているのか、岐阜県土岐市の窯元を訪ねた。 from Z_Vol.35_2025多彩な魅力を放つ美濃焼と朱・黒の優美な漆が融合(上)たたらと呼ばれる細長い板を使って粘土の塊を7㎜、8㎜など均一の厚みにスライスしたら、皿などの型に押し当てて成形する「たたら成型」。表面にわずかな凹凸ができるなど、少しずつ個体差が出る(右)円盤の中心に土を置いてろくろを回し、遠心力を使って手で目指す形に仕上げていく若尾宗洋氏1979年、岐阜県土岐市駄知町生まれ。幼い頃から焼物に囲まれて育ち、多治見工業専攻科(窯業)で専門知識を習得。朱色の釉薬で低温焼成する「ジャパネスクシリーズ」など幅広い商品を開発。陶磁器に漆を塗るという発想を得てから研究を重ね、2014年「漆陶 そう吉」ブランドを立ち上げ、2017年宗山窯4代目継承。国内はもとより海外へのブランド発信に取り組む。(左)粘土を真空土練り機に入れて硬さを調整しながら真空ポ ン プ で 粘 土 に 含まれる空気を吸い取る。ひずみや切れなどのリスクを減らすことで品質が高まる(右)石膏型に粘土の固まりを入れ、半自動のろくろを高速回転で回して成形する(左)成形したら、まずは生地の水分を飛ばすよう乾燥させる。その後、約700℃で焼成する素焼きの工程に入る。水分を飛ばして強度を上げ、絵付けの作業をやりやすくするほか、生地の吸水性が上がるので、釉薬の水分を吸ってより吸着しやすくなる効果もうのう)地方で生産されている焼物の総重厚でなめらかな質感を持つ陶器に本漆を施した「漆陶(Shittou)」。内側に施された手描きの藍色の絵付けが素朴な風合いを醸し、外側は朱色と黒の漆が柔和かつ艶やかな気品を放つ。なんとも不思議な魅力に溢れた器である。製造販売しているのは、美濃焼の主な産地として知られる岐阜県土岐市にある小さな窯元「宗山窯(そうざんがま)」。日本を代表する焼物である美濃焼と漆はどのように出会い、漆陶が誕生したのだろうか。そもそも美濃焼は岐阜県南部の土岐市、多治見市、瑞浪市といった東濃(と称である。約1,300年前の飛鳥時代、須恵器(すえき)と呼ばれる土器が焼かれていたのが始まりとされる。平安時代は富裕層向けであったが、鎌倉時代や室町時代には庶民向けの陶器が生産されるようになった。そして、織田信がみすりえ)や銅板転写などの技法で同長や豊臣秀吉の時代になると、千利休や古田織部などによる茶の湯文化の流行から、より自由な造形、豊かな色彩、大胆かつ繊細な絵付けなど、さまざまな個性を持つ作品が次々と生み出されていった。中でも「志野」「黄瀬戸」「瀬戸黒」「織部」と呼ばれる焼物は、時代を超えて今なお世界中から愛され続ける日本を代表する焼物である。多くの日用雑器が作られた江戸時代から明治時代になると、型紙摺絵(かたじ絵付けの陶磁器が大量生産されるようになった。東濃地方は今も全国シェアの50%を誇る陶磁器の一大産地だが、一方でその多彩すぎるデザインゆえ、美濃焼は特徴を挙げるのが難しいと評される。さらに現在、伝統の技を現代風にアレンジしたり、作家の個性的なデザインに磨きをかけたり、古来の技を深く追求したりと、美濃焼を改めて全国に広めようとする動きが起こり始めているという。今回訪れた宗山窯も、そのひとつだ。24
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