fromz-vol35
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失敗から学び成長する組織になるために、「心理的安全性」の高い組織づくりと、「賢い失敗」をする方法を明らかにする書!失敗の起こる状況を、著者は三つのコンテキストに分類している。「一貫性コンテキスト」は、ほぼ決まった生産ラインのような状況、「変動制コンテキスト」は、さまざまな要因が失敗を招きかねない飛行場などの場合、「新奇性コンテキスト」は、医薬研究など未知の領域に取り組むような状況。それらの状況で起こり得る代表的な失敗が、「基本的失敗」「複雑な失敗」「賢い失敗」と言えるが、すべてのコンテキストで、あらゆる種類の失敗が起こり得る。コンテキストの認識能力を身につけることが重要なのは、望まない失敗を防げるだけでなく、安全に思考錯誤できる場面では実験を楽しむことができるからだ。アプローチを変えることで、どんなコンテキストでもうまくやっていけるようになる。自己認識、状況認識の次に、物事全体をシステムとして認識することが重要であると著者は指摘する。一歩下がって広い視野でモノを見る能力、自分の関心事がより大きなシステムの一部かもしれないことを見きわめる能力は、練習によって身につけることができる。ビジネススクールでの「ゲーム」を紹介し、木を見て森を見ず、それぞれが部分最適だけを目指すことが、システム全体の失敗につながることを明らかにする。本書では内容に相応しい事例が満載である。企業として失敗を共有することを奨励する仕組み(トヨタのアンドンや、レストランNOMAやデザイン会社IDEOの取り組み)や、失敗から学んで成功した実業家(アパレル業界のサラ・ブレイクリーや、世界的ワイナリーのバルブ・ニコル)などの話は、読み物としても魅力がある。また、関連するさまざまな研究(「学習する組織」など)にも触れられており、より説得力の高い内容となっている。失敗をオープンにして共有できる風土をつくり、その失敗から成長につながる組織を目指すための優れたガイドブックとしてお薦めしたい。「心理的安全性」とは何か「賢い失敗」をするために「コンテキスト」の違いを認識する「システム」を理解する豊富な事例による説得力from Z ビジネス選書著者は、ハーバード・ビジネススクール教授で、チーム、組織学習を中心とした研究、教育に従事。1999年に「心理的安全性」を提唱し、世に広めた。2011年以来、経営思想家ランキング「Thinkers50」に選出され続けている。他の著書に『チームが機能するとはどういうことか』『恐れのない組織』などがある。なお、原題は「RIGHT KIND OF WRONG」である。「優れたチームは、ミスが少ない」という前提で病院の投薬ミスを調査していた著者は、まったく逆の結果に驚くことになる。なんと、経験豊富な優れたチームの方が、報告されたミスが多いのだ。その真相は、優れたチームほど、ミスを話しやすい、ということだった。私はこうした労働環境の違いを「心理的安全性」という言葉で表し、それを測定するための調査項目を作成した。そこから組織行動学の新たな研究分野が生まれた。今では教育から経営、医学まで幅広い分野における1000本以上の研究論文によって、心理的安全性が高いほどチームや組織のパフォーマンスは高く、燃え尽きる人は少なく、医療分野では患者の死亡率まで下がることが明らかになっている。著者も、前提が崩れたことを失敗と考えず、成長のチャンスと考え、研究を進めていった。失敗を悔いる「硬直マインドセット(成果マインドセット)」ではなく、失敗を学習機会ととらえる「成長マインドセット」の重要性を、自ら実証したと言える。次につながる「賢い失敗」をするためのヒントの中では、「リフレーミング」が重要だ。オリンピックでは、三位の銅メダルを獲得した選手は、二位の銀メダルの選手より幸福で、失敗の痛みを感じない傾向にあることが明らかになっている。銀メダリストは、その結果を金メダルを獲得したケースと比較して失敗ととらえる。一方三位になった選手は結果を成功ととらえる。オリンピックでメダルを取ったのだ! と。銅メダリストたちは自ら結果を「損」から「得」へととらえ直したのだ。このシンプルな(そして科学的に有効な)「リフレーミング(枠組みの転換)」によって、彼らは後悔ではなく喜びを感じた。本書では、人間は失敗する生き物だ、ということが何度も強調される。問題は、その失敗をどうとらえ直すかなのである。「賢い失敗」をするために、本書では、多くの人や組織での失敗の事例が紹介され、その内容を体系化している。20本書の目次プロローグ序章第一部 失敗の全体像を理解する第一章 「正しい失敗」を求めて第二章 これだ!第三章 人間は失敗する生き物だ第四章 パーフェクトストーム第二部 上手に失敗する技術 実践篇第五章 「われわれはすでに敵と遭遇している。第六章 状況と結果第七章 システムを理解する第八章 失敗しながら成功する謝辞著者▪エイミー・C・エドモンドソン訳者▪土方奈美発行▪早川書房発行日▪2025年2月25日定価▪2,750円(税込)体裁・ページ数▪A6判・376ページそれはわれわれ自身だ」from Z_Vol.35_2025『失敗できる組織』

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