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1234from Z_Vol.35_2025デザインコンサルタントプロダクト・デザイナー/デザイン・エンジニアトライポッド・デザイン株式会社 CEOURL◦https://tripoddesign.comフグリッド)ではセンサー自体を動かせないことが 「これまでは最大限の電気を最速で作るのが主 「超小集電はオフグリッド環境下における再生超小集電(Micro Power Collection)とは「あらゆる自然物を媒体とし、集電材(電極)を介して極微小な電気を収集する技術」である。驚くことに、この発見はかなり偶発的なものだったという。「元々の研究テーマは、センサー技術で人間の感覚を拡張する“センシング”でした。しかし、研究する上で、そもそも送電網が届かない環境(オ問題になってきたのです。最近はソーラーなど、エナジーハーベスト技術が進化していますが、そんな大掛かりなものではなく、センサーやちょっとした通信媒体を動かすために、もっと平易に自然の中で微弱な電気を発生させることに着眼し、研究に取り組むことになりました」最初に足掛かりとなったのは微生物燃料電池だった。これは微生物が有機物を分解するときに生まれる電子を利用して発電する技術である。微力ながらセンシングや通信に活用できる電力を得ることに成功したきっかけは、たまたま海岸の砂を試したところ、今までにないほどの電力が出たことだったという。「もしかしたら海洋微生物のせいではないかと思いました。そこで思い切って海水に電極を入れると、なんと一気に電気が出ました。しかもその後の研究で、電池のプラスとマイナスが逆転していたことが分かったんです。それで、特別な微生物のせいではなく、実は電気はもっと身近なところで起きているということに気づきました」超小集電の電力発生の原理は、ボルタやガルバニ、ダニエルといった電池のアイデアを元にして構築されている(図1)。要はイオン反応が大事で、金属が電子を放出し酸化=錆びることが引き金となる。必要なのは電極になる金属、そして有機物、酸素、水。つまり、生命がある場所なら確実16に集電できるということだ。その後、水道水や土、コンポスト(たい肥)、コンクリート、ワイン、フランスパンなど、あらゆる媒体に電極を挿して電力を測る実験を繰り返した(画像2)。その結果、3,250種類の媒体から集電できることを実証した。流でしたが、そのせいで資源の枯渇や温暖化などさまざまな問題が生じています。私たちの考えはそうではなく、これまで見逃されていた非常に小さな電気を“だらだら集めること”で長く使い続けることにあります。ゼロカーボンだから環境にもやさしい電気といえるでしょう」超小集電はふたつの集電方法があり、ひとつは土などの電解質に直接電極を挿す「直接集電型」。もうひとつは集電装置(セル)内で集電する「集電セル型」で、こちらの方がより大きな電力を得ることが可能だ。2021年7月には茨城県北部の山間部に建てられた「KU-AN(空庵)」において、木製のセル1,500個に詰められた土壌を介し、2.2W の集電に挑戦。ヒノキで組み立てたガラス張りの建物を、5V で点灯する800個のLEDライトで照らすことができた。2025年7月には世界初となる100Wの集電にも挑戦した(画像3)。また、2023年には土壌を介した集電電力によって超小型人工衛星「OPTIMAL-1」とのデータ通信実験にも成功(画像4)。これにより、近い将来、地球上の電気のない場所の異変のデータ収集が可能になりそうだ。循環型の電源として、世界の未電化地域や災害で電力が絶たれた場所に電気を供給することが可能です。今後も寒冷地や海洋、地下、そして宇宙空間での集電など、近い未来での実用化に向けてさまざまな挑戦を続けていきます」[ビジネス新潮流]エネルギー供給の持続可能性が問われる現代において、自然界に存在する微小な電気を収集・活用する「超小集電」技術が注目されている。土壌、食品、廃棄物などの身近な媒体から持続的に電力を取り出す手法は、既存の電源インフラに頼らない電源確保の可能性を示すものだ。災害時やオフグリッド環境下での電力確保、さらには宇宙空間における応用まで、その展望は広がりを見せている。発想の原点から技術的構造、社会実装に向けた取り組み、そして将来的な可能性について、トライポッド・デザインCEO 中川 聰氏に話を伺った。中川 聰氏Vol.21オフグリッド環境下や災害時に活躍オフグリッド環境下や災害時に活躍「超小集電」の技術が切り拓く未来「超小集電」の技術が切り拓く未来

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