fromz-vol34
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板板鉄基生生マーケティング転写エンジニアリングチェーン図5モノづくりの基本は「設計情報の良い流れ(転写)」を作ることボディ部品(ドア部分)回路基板創造・翻訳創造・翻訳転写転写/移動生産(製品)販売設計情報媒体(人工物)媒体(その他)転写購買(原材料)生産(仕掛品)ボディ金型(ドア部分)回路版下解読消費プレス(転写)露光(転写)製品企画製品設計工程設計・工程素材に転写発注書に転写メディアに転写サプライチェーン設計意図の解読アシスト機能スパルタンな走りヨーロピアンデザイン「流れづくり」「人づくり」から「競争優位」が生まれる藤本氏 製品開発のフロントエンドでのシステムズエンジニアリングの必要性やその体系化には全く同感です。日本では、プロダクトエンジニアが花形ですが、フォルクスワーゲンでは、アーキテクチャエンジニアが最も上位で、ついでインターフェースエンジニア、モジュールエンジニア、プロダクトエンジニアの順だと、当時同社の開発責任者だった旧知のDr.ハッケンベルクが言っていました。藤本氏 モノづくりを最も単純化して説明するなら、人間の思考や思想を人工物の設計情報に集約し、それを媒体(直接材料)に転写することにあります。ここで大事なのは上流の設計情報が正確かつスムーズに流れることです。今までは製品・工程エンジニアリングでの生産性向上とリードタイム短縮にフォーカスされていましたが、今後は更に上流のプランニングやコンセプト情報をいかに設計資産として格納し、実装工程と連携できるかが、要になってくると考えられます。上野 先生の図をお借りして説明すると、システム設計は製品コンセプトを基に製品の詳細設計にむけて創造・翻訳する部分に相当します(図5)。製品のアーキテクチャを決定するのは、まさにこのシステム設計によるところです。システムの要件から機能を洗い出し、アーキテクチャを設計して、機能部品としてエレキ・メカ・ソフトの実装設計に、情報を伝えていく。これを効率的に行うためにも、製品設計や工程設計と同様に、システム設計も「デジタル化」すべきだと考えます。藤本氏 さきほども言いましたが、すぐれたアーキテクチャを導くために、デジタル技術も用いて設計プロセスの上流を体系化することは重要です。ただ先端的なITを持つことは、能力構築競争に勝つための「必要条件」ではありますが、「十分条件」ではありません。ITがそれ単独で、競争力を左右するという幻想は、今や誰も持っていないと思いますが、地道にモノづくり組織能力を構築してきた企業でないと、ITを活用し、パフォーマンス向上に結びつけることはできないでしょう。 私は、「デジタルものづくり」の核となるのは、「流れづくり」「人づくり」による競争力向上が、収益をもたらし、従業員の「成長実感」に結びつける三位一体の取り組みにあると考えます(図6)。ITによって設計情報の良い「流れづくり」を行い、モノづくり全体を深く理解した「賢人」とも言うべきリーダーによって牽引される強い組織をつくり、自社の強みや優位性を伸ばす取り組みができれば理想的ではないでしょうか。上野 おっしゃるとおり、モノづくりにおけるDXの実現には、現行のシステム設計プロセスや従来のやり方を変える必要があり、それをやり遂げる組織能力が不可欠です。私たちベンダーもIT製品を納入しただけで、DXが完成するとは全く思っていません。例えばMBSEツールの導入においては、最低でも半年以上の評価を行い、どのプロセスに適用するのが効果的なのかを決定し、さまざまな課題を想定した導入検証を進めます。そのために、8from Z_Vol.34_2025

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