輸出比率図42.51985年 図研に入社。1995年PLM製品の原型となるDS-1を開発。2010年 統合BOMとして Visual BOMを開発。2016年 図研プリサイト設立、代表取締役社長に就任。国産初のBOPシステムを開発。2020年 図研に帰任、事業本部長に就任。2024年より現職。グループを横断した新規事業の開拓やDX事業の推進にあたる。現物製品・工程アーキテクチャ(製品の特性)競争力※2 東京大学経営教育研究センター(MERC)と東京大学ものづくり経営研究センターが中心となって、ものづくりの競争力を高めるためのデジタル技術のあり方を企業人や研究者などで議論・研究する会能力構築環境現場ものづくりの組織能力(特定地域に偏在)能力構築競争能力構築能力特定国・特定製品の競争力製品のインテグラル・アーキテクチャ度と輸出比率市場・顧客の機能・コスト要求社会が課す制約条件・規制製品の技術的・構造的な制約参照:東京大学 大鹿隆氏・藤本隆宏氏作成図企業・事業・現場担当者の主体的な行為・選択その他の環境条件、偶然事象、他6from Z_Vol.34_2025株式会社図研 専務執行役員 事業戦略担当適合?見出す視点として、先日デジタルものづくり研究会※2で説明されていた、製造業の競争力を分析された「CAPアプローチ」について紹介いただけますか。藤本氏 「CAPアプローチ」とは、「組織能力(Capability)」スを体系的に捉えることで、どの国がどういう領域で優位性を発揮するのか、つまり「設計の比較優位」を明らかにするものです(図3)。設計思想と組織能力のバランスが良好であれば、その産業は国際的な競争力を持ちます。 この組織能力には、分業・専門化・個人能力・事前標準化を特徴とする「分業型組織能力」と、協業・多能化・チームワーク・継続的調整を特徴とする「統合型組織能力」があります。他方、設計思想には、パソコンに代表される、機能と構造の関係が1対1の「モジュラー(組み合わ対多で調整が必要な「インテグラル(擦り合わせ)型アーキグローバル化時代の産業分析:CAPアプローチテクチャ」に分類されます。 産業の勃興期に移民や農民を労働力として大量に確保できたアメリカや中国は、流動的な労働力を活用した「分業型組織能力」を形成し、調整節約型(モジュラー型)の製品アーキテクチャに強みを持つようになりました。その結果、アメリカは、物理法則に支配されずモジュラー型寄りのソフトウェアや情報サービスで世界市場を席巻し、中国はデジタル家電の世界最大の生産拠点となりました。 他方、高度成長期に工業地帯への移民や農民の大量流入がなかった日本では、限られた現存の安定的な労働力で現場を支える必要がありました。そのため、多能工と協業を重視した「統合型組織能力」が形成され、調整集約型(インテグラル型)のアーキテクチャの貿易財に強みを持つようになりました。その代表といえば高性能自動車ですが、日本はこの40年間、一貫して年間500万台前後を輸出し、海外生産を含めれば世界市場の約3割のシェアを維持しています。上野 日本がインテグラル型アーキテクチャに強さを発揮しているのはこのような背景があったのですね。 藤本氏 自動車以外でも高精度な産業機器や機能性化学品など、インテグラル型アーキテクチャの度合いが高い製品ほど輸出比率が高いことがわかっています(図4)。これも日本の製造業がグローバル市場で競争優位となるアーキテクチャがインテグラル型である傾向を示しています。インテグラル型とは、つまり製品の機能と構造の擦り合わせにより最適設計を突き詰めることであり、一言で表現するなら、「めんどくさい」モノづくりです。上野 一方で、バッテリーとモータで動くEVは、「めんどくささ」とは逆方向で、パソコンのようなモジュラー型アーキテクチャに見えます。中国や欧州がこれを推進し「設計思想(Architecture)」「競争優位(Performance)」のバランせ)型アーキテクチャ」と、自動車に代表される関係が多図31.50.5100.0%90.0%60.0%40.0%20.0%0.0%-0.52インテグラル・アーキテクチャ度-1-1.5上野 泰生CAP310
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