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す(図1)。もし一部の自動車メーカーが、高付加価値系の年2202年0202年1202年9102年7102年8102年6102年4102年5102年2102年3102年1102年9002年0102年8002年6002年7002年4002年5002年3002年1002年2002年0002年8991年9991年6991年7991年5991年3991年4991年2991年0991年1991年1202年2202年9102年0202年8102年6102年7102年5102年3102年4102年1102年2102年0102年8002年9002年7002年5002年6002年3002年4002年2002年0002年1002年9991年7991年8991年5991年6991年4991年2991年3991年1991年099105図2図11979年東京大学経済学部卒。三菱総合研究所、ハーバード大学博士課程を経て、1990年~2021年東京大学経済学部助教授・教授。2003年~2021年東京大学ものづくり経営研究センター長。2021年4月より現職。東京大学名誉教授。専門は技術・生産管理、進化経済学。進化経済学会フェロー。『製品開発力』『生産システムの進化論』『生産マネジメント入門ⅠⅡ』『能力構築競争』『建築ものづくり論』など著書多数。※1 日本もの造り哲学 藤本隆宏(著)(2004 日本経済新聞出版)単位:就業者数=万人 付加価値総額=千億円1,6001,4001,2001,000800600400200製造業 就業者数と製造業実質付加価値総額の推移2022、23年は輸出大幅ジャンプ史上最高に製造業就業者数推移製造業実質付加価値総額推移早稲田大学 ビジネス・ファイナンス研究センター 研究院教授合同会社FTものづくり研究所 代表社員日本の工業製品の輸出額は史上最高に製造業の「衰退」は根も葉もない思い込み擦り合わせが不可欠な「インテグラル型」製品に強みをもつ日本上野 藤本先生とは、東京大学ものづくり経営研究センター(MMRC)を主催されていた2000年初頭からのお付き合いになります。当時、『日本のもの造り哲学』※1でモノづくりをインテグラルとモジュラーというアーキテクチャの観点でとらえた先生の論考は、業界に大きなインパクトを与えました。激しいグローバル競争下にある現在の日本の製造業をどのようにご覧になっているのかについて、お伺いしたいです。特にこの10年、「日本の製造業が衰退している」といった見解を耳にしますが、これについてはどのようにお考えでしょうか。藤本氏 製造業の衰退を強調する論調がありますが、数字からはそのような事実は見えてきません。工業製品の輸出額は2022年に90兆円を超え、過去最高額を記録しました。日本の製造業が無敵だと言われていた1990年頃の輸出額が約40兆円程度ですから、2倍以上に増えていま自動車を現地生産の代わりにもっと輸出していたならば、輸出額はすでに100兆円を超えていたでしょう。 AV機器も2000年初頭までは自動車と並んで世界を席巻していましたが、製品がデジタル化しモジュラーアーキテクチャとなってから衰退しました。先の日本製造業衰退論は、こうした一部産業の状況を拡大解釈してのことでもあります。いて、この30年間で1,500万人から1,000万人にまで減少しました。一方、実質付加価値総額は、30年前の80兆から120兆円へと着実に成長しています(図2)。振り返れば、かつて中国との賃金差が20倍もあり、多くの国内工場が閉実際のところ、製造業の就業人口については縮小して工業製品貿易収支の推移鎖され、中国工場に代替されました。しかし、その中でも多くの日本企業は現場の生産性や製品の非価格競争力を向上させ、その結果、日本に残った工場も少なくありません。この間、製造業におけるひとりあたりの付加価値生産性は約600万円から1,100万円以上と約2倍に増加していますが、非製造業の生産性はほとんど伸びておらず、両者の間で大きな差が出ました。賃金差という大きなハンデを背負いながら、これだけの結果を残している日本の製造業はむしろ「善戦してきた」と言えるでしょう。上野 なるほど。日本製造業は人口減にあえぎながらも付加価値総額では衰退していないとすれば、その分析から勝ち筋を見出したいところです。付加価値競争力を1990資料:内閣府HP.2020年度国民経済計算(2015年基準)他より藤本氏が作成単位:10億円100,00090,00080,00070,00060,00050,00040,00030,00020,00010,0000■輸入 計 ■輸出 計 ■収支財務省貿易統計(https//www.customs.go.jp/toukei/search/futsu1.htm)のデータをもとに藤本氏が作成2020from Z_Vol.34_2025藤本 隆宏氏

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