fromz-vol34
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――最初に家庭用蓄電システムを取り巻く昨今の市場環境について聞かせてください。西田氏 近年、地球環境に優しく、増加する自然災害にも強い電力供給システムへの期待が高まっています。こうした社会情勢の中、次世代の電力供給システムにおいて重要な役割を担う家庭用蓄電システムの市場は成長しています。再生可能エネルギーによる「電力の地産地消」という考えが広まっていますが、家庭用太陽光発電で供給される電気を安定的に家庭生活で使えるようにしたり、電気自動車のバッテリーと連携させるなどの電力活用には家庭用蓄電池の存在が不可欠です。ニチコンの家庭用蓄電システム事業は、こうした市場の動きを追い風にして、売り上げを伸ばしてきました。――家庭用蓄電システム開発において、特に難しい点はどういったことですか?西田氏 家庭用蓄電システムの開発では、経済産業省や電力会社が定める厳格な基準や法律の遵守が最大の課題です。中でも、家庭で蓄電された電気に対する品質要件が厳しくなっています。その設計において、設計担当者はまずそうした規制について熟知していることが求められ、さらにそれをどう解釈して製品の仕様に落とし込むのかを検討する力も要求されます。また、デジタル化されてきているものの、蓄電システムには今もなおアナログな要素が多く存在することから、設計者自身が積み重ねてきた経験や勘頼りになり、難易度が高くなります。 また、家庭用蓄電システムの開発サイクルは約1年です。限られた時間内で、販社からフィードバックされたユーザー要望による機能追加リクエストにも柔軟に対応していかなければなりません。対応できなければ、「他社製品は実装しているのに、うちの製品には実装していなかった」となり、市場での競争力を失ってしまいます。―― Knowledge Explorerの導入を検討したのはなぜですか?業務用一般電源の会社が家庭用蓄電システム事業を開始15年で社員の7割が関わる主力事業へ成長属人化しがちなアナログ設計だから、経験の浅いメンバーでも社内に埋もれている情報を自力で見つけ出せる環境にしたい2019年頃の当社では、設計情報やノウハウが個人に紐づいて属人化しているという問題がありました。例えば、業務用電源の設計では長年、1人の担当者が製品設計の最初から最後まで責任を持つスタイルでやってきました。西田氏 業務用電源の開発では、メーカーごとで固有の要件があったり、独特な用語や言い回しがあったりもします。そのため、1メーカーに対して1担当者が対応することが多くなっていました。そのため担当するメーカーが変わると、設計の進め方も大きく変わってしまうこともあり得ます。このような状況だったので、設計担当者が退職してしまうと、その後を引き継ぐ新しい担当者が社内にある過去の情報や資料をうまく探しだせないといった問題がありました。大塚氏 その部署での設計経験が長い熟練者であれば、頭の中で「どこに何があるか」を記憶しており、効率よく社内の情報を探しあてます。ただ、そうであっても、かなり昔の資料のありかなどを忘れてしまうこともあるでしょうし、完ぺきではないと思います。一方、現場配属されて間もない新人は、限られた開発期間の中で、自分がよく知らない情報を効率よく探していかなければなりません。分からないことを尋ねる際も先輩のタイミングをうかがったり、「一体、どこから、どのように尋ねたらいいのか」と悩んでしまったりすることでしょう。書類を探している時間や、「どうやって聞こうか」と悩む時間は、本人にとって心理的負荷も大きいし、何より業務を圧迫します。「埋もれてしまいがちな情報や知見を簡単に探せる仕組みがあれば、さまざまな問題が解決できる。そのためのいいツールはないか」と思っていた矢先、訪れた展示会で図研プリサイトのKnowledge Explorerを知りました。インストールした後、検索対象にしてもらいたいデータ格納場所を設定したら、1~2日で200万データが登録されるため、社内展開含めて1週間程度で運用開始できると知り、興味をひかれました。――設計部門では、Knowledge Explorerをどのように活用していますか?西田氏 導入から約5年経過した現在、Knowledge Explorerは設計現場に限らず、社内で定着してきています。特にチームプレイで設計する蓄電システム開発では大塚氏 Knowledge Explorerの導入を検討していた15from Z_Vol.34_2025

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