CMOSイメージセンサ構造の進化 表面照射型→裏面照射型→積層型と進化を遂げてきた表面照射型図1※4 HDR(High Dynamic Range):通常撮影時(SDR/スタンダードダイナミックレンジ)に比べて、より広い明るさの幅(ダイナミックレンジ)を表現できる技術のこと。 ※5 TSV(Through Silicon Via):シリコン貫通電極の意味で、従来Cuワイヤーボンドにてチップを電気的に接続する代わりに、シリコンウェーハー内部に上下貫通する細い穴(ビア)をあけてその内側に金属を埋め込んで電極を作成し、マイクロバンプを通してシリコンチップを電気的かつ機械的に接続する技術。※6 9~12ページの横浜国立大学 井上史大准教授の記事を参照オンチップレンズ金属配線フォトダイオードロジック回路シリコン基板ロジック回路フォトダイオード支持基板フォトダイオードTSVロジック回路Cu-Cuロジック回路6用として進化させました。この取り組みが功を奏し、大手スマホメーカー各社による採用が決まりました。大量生産に向けた大きな布石になったと思います。仮屋 2012年には、積層型イメージセンサーを商品化されています。改めて積層化のメリットを教えてください。岩元氏 従来のCMOSイメージセンサーは、画素と論理回路を同じ層に形成し、支持基板を下層に貼り合わせていました。積層型における一番のメリットは周辺回路を、今まで単なる支持基板だった下層に持っていくことで、XY方向の「土地」が狭くなりコスト削減につながることです。また、下層に持ってきたことで拡張された土地である論理回路領域に、HDR※4など、新たな付加価値のある回路機能を入れることで、CMOSイメージセンサーの機能を進化させることができます。さらに、画素と周辺回路で必要な異なる特徴を持つトランジスタを別々に作ることが可能となります。これは今でいうチップレットの考え方に通じるところですね。 その時に、私はせっかくやるなら、Cu-Cu(カッパー・カッパー)接続をすればいいじゃないかと考えました。Cu-Cu接続とは、積層型イメージセンサーの画素チップと論理回路チップをそれぞれの接合面に形成したCu(銅)端子で直接接続するもので、2010年の時点ですでに研究を行っていました。ところが当時は装置技術がなかったためすぐには実現不可能だと判断し、まずはTSV※5接続で進めることになったんです。 しかし、結果的にTSV接続による積層型の量産は数年で終えました。というのも、画素エリアの中はTSVを貫通させられないので周辺に接続のための専用領域を設け、そこにTSVを形成することになります。オートフォーカスなど高性能化を追求するとなると上下のチップを接続するI/O点数がもっと必要とされるからです。TSV接続による量産と並行しながらも一早くCu-Cu接続を実現させるように開発を進めていました。Cu-Cu接続にすることで、チップをさらに小型化できコスト削減にも繋げられます。 さらに現在では論理回路の進化や微細化も進んでいます。初期の回路領域は90nm世代程度でしたが、トランジスタの増大や消費電力を下げたいなどの要求から40nm世代になり、今や主流が22nm世代に移ってきています。これだけ数多くのトランジスタと上の画素領域のウェーハをつなげるためには、Cu-Cu接続が必須です。現在、当社でのCu-Cu接続のセンサーの売上は1兆円規模まで拡大しており、Cu-Cu接続の製造実績は十分と言えます。近年、超先端ロジック半導体を作っている方々の間でCu-Cu接続を取り入れる機運が高まっている※6のは実績ある技術と認められたからではないでしょうか。裏面照射型積層型(TSV)積層型(Cu-Cu)イメージセンサーの積層化Cu-Cu接続など新たな技術を開発
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