Corporate DistinguEngiishedneerソニーセミコンダクタソリューションズ株式会社第2研究部門/第4研究部門部門長 5岩元 勇人氏※1 CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor ):pMOSFETとnMOSFETと呼ばれる2つの異なるトランジスタ技術を組み合わせた半導体回路構造。高い集積度・低電力消費・高速性・信頼性を備えており、デジタル回路からアナログ回路に至るまで幅広く利用されている。※2 CCD(Charge Coupled Device ):フォトダイオードで生成された電荷を、隣合った素子に受け渡しバケツリレーのように移動させて、増幅器で最終的に電圧に変換し転送する方式。※3 裏面照射型:P6 図1「CMOSイメージセンサ構造の進化」参照。1992年 ソニー株式会社(現:ソニーグループ株式会社)入社。現在は、ソニーセミコンダクタソリューションズ株式会社 第2/第4研究部門部門長に加え、Corporate Distinguished Engineer に認定。半導体ユニットプロセス技術、インテグレーション技術、及び、モバイルデバイスの開発をマネジメントしている。Conversation仮屋 半導体分野に関して、最近ではテレビなどでも三次元ICやヘテロジニアスインテグレーションといった話題が取り上げられるようになってきました。ソニーは、以前からこの領域での技術開発に取り組まれていますが、その歩みをお聞かせください。岩元氏 CMOS※1イメージセンサーが流行り始めた2000年頃、ソニーの半導体事業の主力は「プレイステーション®」用の画像処理や演算処理用のロジックでした。当時、まだCCD※2だったイメージセンサーの事業は、順調に利益を出し、市場でトップシェアを維持していましたが、CMOSイメージセンサーの開発では遅れをとっていました。競合他社に水をあけられていたことから、ゲームチェンジを図るべく、まだ誰も実現できていなかった「裏面照射型※3」のCMOSイメージセンサー開発に取り組むことになりました。仮屋 裏面照射型というアイデアはどうやって生まれたのでしょうか。岩元氏 実は、CCDの領域では裏面を削って光を取り込むという考え方自体は以前からあったものです。学会の論文にもありましたし、一部カスタム用で天体望遠鏡などに他社の実例があることを知っていました。そのような中で「裏面から光を入れることで感度が上がると思うが、このようなものが作れると思うか?」と当時の新デバイス開発を担当している部長に尋ねられ、その時に閃いたアイデアをホワイトボードに書き留めました。それが2003年くらいでしたね。その後、興味がありそうなメンバーを集めてブレストをするなどして実現に向けて進めていきました。仮屋 それまで誰もやっていなかった試みということで、ご苦労も多かったのではないでしょうか。岩元氏 商品化までは試行錯誤の連続でした。光を電子に変えるフォトダイオードとトランジスタと配線の高さを合わせても30μm程度しかないため、ウェーハを薄くすると、たわんでしまって剛性が低下します。やはり剛性を持たせるために何かしら支えるものに貼り合わせないといけないということから、支持基板を貼り合わせた後に、センサウェーハを削ってフォトダイオードの面を出す方法を考えました。とはいえ、どう作れば良いか分からないため、いろいろ試しました。クリーンルームのなかで私が手と手でウェーハを貼っては削っている姿は周囲から奇異な目で見られていたと思います。 世界初となるソニーの裏面照射型CMOSイメージセンサーは2009年に商品化されたのですが、それまでの間、経営陣からは「本当にモノになるのか」「もう辞めたほうがいいのではないか」と何度も言われて大変な思いをしました。そのような中で、同僚とともに蛍を撮影した暗いガラケー(ガラパゴス携帯電話)の画面を見ながら「裏面照射型を実現して、暗い場所でも綺麗な蛍を撮ろう」とモチベーションを高めあったこともあります。 このような苦境のなかでも技術のブラッシュアップを重ねた結果、社内のハンディカム部隊が「暗い場所でも明るく撮れる」という性能を認めてくれ、デジタルハイビジョン“ハンディカム”向けに生産を開始することになりました。量産化にあたって、前工程では大敵となるダストが多く発生するバックグラインダー(裏面を削る装置)や、貼り合わせの装置など、後工程の装置を持ってくることにしたので、装置メーカーに前工程で求められる要件・規格などの常識を説明して、改良してもらいました。その後、携帯電話やスマートフォン(以降、スマホ)への展開に際し、より手頃な価格帯に持っていくため、当初200mm用としてデバイスプロセス設計したものを300mm誰も着手していなかった裏面照射型のCMOSイメージセンサーに挑戦
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