fromz-vol33
16/24

■デジタルとAI時代を勝ち抜く企業変革の実践書■』「DX」について、もはや「Why」は不要、「What」と「How」を明確にし、ビジネスを配線し直す(Rewired)ための実践ガイド!業界などにより異なるオペレーションモデル(デジタルファクトリー型、全社的アジャイル型など)について、詳細な図・表で補足されていることで、理解が深まる。こうした企業の共通点は、IT部門がプロフィットセンターではなく、コストセンターとして扱われ、バックオフィス機能の一部とされている状態だ。コストセンターである以上、IT部門の毎年の目標は、いかにITコストを下げるか、という課題が最も重要視され、企業の成長ドライバーとしては期待されていない。付け加えられている他国と日本のIT投資のグラフは、まさに失われた30年を物語っている。AI導入と普及のため、40,000人の従業員を対象とした「学校」を構築した企業のことや、最終章の海外三つのDX先進企業の例、そして補記にある日本企業の例も、大いに参考になるだろう。コンサルティング会社が、本書ほど具体的な図表などをオープンにするのは、珍しいだろう。もちろん、属する業界と自社用にアレンジする必要があるが、DX実践のためのガイドとして推奨できる一冊である。北米マッキンゼーのデジタル部門が、2,000社以上のデジタルおよびAIトランスフォーメーション・プロジェクトを支援した中で、特に成功を収めた約200社との共同作業で導いた方法論や教訓をまとめた書。図表も多数使われ分かりやすい。翻訳を担当した日本のマッキンゼー・デジタルによる日本語版補記を含む。何百、何千ものチームがテクノロジーを駆使し、持続的な顧客体験を創造し、効率を向上させ、価値を高め、成長を遂げる必要がある。それこそが、『Rewired:ビジネスの配線をし直すこと』なのだ。いかにして、配線をし直すか、章の順番に、印象的な内容を拾い上げてみる。長期的な視点でのケイパビリティ構築こそが、DXリーダー企業と、ユースケースを散発的に試して短期的な解決策を探し回る企業との差を決定づける要素なのである。中核となるケイパビリティ※1として、プロジェクト遂行のための人材の育成と組織化が続く。本書に掲載された多くの図表の中でもユニークなのは、「デジタル人材チームの構築」について、採用プロセスと課題について描かれた「リクルーティングジャーニー」だ。長期的にデジタル人材を惹きつける鍵は、能力開発機会のある職場環境を継続的に提供することにあるという指摘が説得力を持つ。「企業が従業員に提案する価値(EVP : Employee Value Proposition) 」という言葉は、日本企業にとって今後ますます重要になるだろう。英語頭文字によるキーワードが多く登場するのは、本書の特性からやむを得ないだろう。オペレーションモデルの章で登場する「OKR」は、 Objectives and Key Resultsの略。「目標と主要な成果指標」を意味し、チームメンバーに共有されなければ、どんなモデルも成功することは難しくなると指摘する。本書の目次日本語版出版にあたってはじめにCHAPTER 1 DXロードマップの構築CHAPTER 2 デジタル人材チームの構築CHAPTER 3 新たなオペレーティングモデルの導入CHAPTER 4 スピードと分散型イノベーションのためのテクノロジーCHAPTER 5 あらゆる場所にデータを浸透させるfrom Z ビジネス選書16※1ケイパビリティ:ここでは「企業全体の組織的な能力」という意。※2リーン生産方式:プロセス管理を徹底して効率化することで、従来の大量生産と同等以上の品質を実現しながらも作業時間や在庫量が大幅に削減できる生産方式CHAPTER 6 導入と普及の鍵CHAPTER 7 変革ジャーニーのストーリー解説—「おわりに」に代えて著者■エリック・ラマール/ケイト・スマージュ/ロドニー・ゼメル代表監訳■黒川通彦発行■東洋経済新報社発行日■2024年1月17日定価■3,080円(税込)体裁・ページ数■A5版・414ページもはやWhyは不要、WhatとHowに焦点「日本語版出版にあたって」で、これまで多くの書籍がテーマとした、DXがなぜ(Why)必要か、についてはもはや語る必要はなく、本書は、何を(What)、どうやるか(HOW)に大きな焦点を当てている、と記している。なお、書名について、著者の一人エリックは、こう語っている。現在および次の10年に向けて本書の構成は、まず「DXロードマップの構築」から始まる。経営陣が「北極星(目指すべき指針)」となるビジョンを策定し、合意を形成することが最重要と力説。そして何より、長期的な視点が不可欠と語る。IT部門はコストセンターかテクノロジーの章は、専門用語の内容を確認しながら読み進める必要がある。たとえば、 「DevOps(デブオプス:Development「開発」とOperations「運用」を組み合わせた用語)は、ソフトウェアをユーザーに提供する方法に、リーン生産方式※2の原則を適用しようとする取り組みのことだ。その試みにセキュリティを組み込む場合のキーワードは、「DevSecOps」となる。この章にある日本語版補記には、IT軽視の日本企業に関して次のような指摘がある。PoC貧乏にならないためにAIをベースとしたソリューション開発を成功させるためには、「データアーキテクチャの構築」が不可欠であり、「ゴミを入れればゴミしか出てこない問題(ガベージ・イン、ガベージ・アウト)」が生じると警告している。データをあらゆる場所に浸透させ生成AIを活用するために、経営層には、「PoC貧乏」や「DX企画倒れ」を阻止する役割を求めている。『マッキンゼー REWIRED

元のページ  ../index.html#16

このブックを見る