fromz-vol33
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●三次元「実装」=日本は強い?●三次元実装という言葉が ミスリードしている可能性も?ストレージ 2%図1MISC4%ネットワーク 5%1061%冷却3%電源4%(引用) L. A. Barroso, et al., "The Datacenter as a Computer:Designing Warehouse-Scale Machines, 3rd ed.",Morgan & Claypool Publishers(2018).データセンター消費電力の機器別内訳18%80%が半導体デバイス図2●前工程に(ウェーハ)接合と薄化を奪われる●「実装」に強い=安泰ではない●先端チップレット=前工程+後工程に強くならなければいけない変化している前工程と後工程の境界線DRAMロジック前工程IDM&ファウンドリIDM&ファウンドリダマシンRDLHBよく想像される形実際OSATOSAT後工程半導体を中心とした半導体デバイスによるものです。そのため、半導体の低消費電力化が急務となっています。北海道で進むラピダスの工場や、熊本のTSMC(JASM)の工場など特に製造分野への投資が話題です。しかし、残念ながら現時点で、最先端とされる回路幅の先端ロジックICを日本で作ることはできません。「経済安全保障」という観点からも、日本国内での先端半導体開発を目的とした積極的な投資が望まれます。しかし、先端ロジックになればなるほど開発や製造のために長い時間が必要になり、コストも膨大なものになるというジレンマもあります。それらを解決する技術として、複数の小さなチップを組み合わせて機能させる「チップレット集積」や、その際にチップを縦方向に積層する「3D集積」といった技術が注目されています。従来、IDM(垂直統合型のLSI製造メーカー)や、ファウンドリ(主に前工程を担う製造受託メーカー)が前工程を作りこみ、OSAT(主に後工程を担う組立・テストメーカー)を中心とした後工程に引き渡すという流れで、製造装置メーカーを含め、前後の工程ははっきり分業がなされていました。しかし、現在では前工程を担っていた企業が、「後工程」とされてきた領域の一部も担うようになってきています。例えば3nm以下の微細化を実現するためのキーテクノロジーのひとつに、チップ裏面で電力供給する「BSPDN(BackSide Power Delivery Network)」という技術があります。電源供給配線網(PDN)をシリコンの裏面(BS)に配置するこの技術は、表面と裏面で配線機能を分けるため省スペース化を可能とします。また、配線混雑を緩和するため、SI(シグナル・インテグリティ)の向上、IRドロップ低減など、ひいては省電力化にも寄与します。BSPDNは作りこみの過程で、ウェーハの貼り合わせや裏面のシリコン層を削り取る必要があります。従来「貼り合わせる」「削り取る」という工程は「後工程」で行われてきましたが、BSPDNの製造過程では削った後にさらに前工程が続くため、「前工程」の工場で研削する必要があります。この製造工程の変化は、前工程に後工程が取り込まれているという見方もでき、前工程と後工程の境界線が変わってきていることがわかります。従って、より早く先端半導体の開発を成功に導くためには、工程をまたいだ関係構築や技術、ビジネス面での装置メーカー間の協力がより一層重要になってきています。「実装」=「後工程」という言葉のイメージから、三次元“実装”についても、後工程に強い日本の強みが活かせると見られがちですが、先端ロジック半導体においては、先ほどあげたBSPDNのように本来後工程でやっていた「貼り合わせる」「削り取る」技術を前工程で実施するなど、前工程が後工程を飲み込むような流れがあるため、前後両方の工程に強くないと半導体の技術開発競争に勝ち残ることはできません。先述のBSPDNの例は、プリント基板業界が歩んできた歴史とも重なります。プリント基板も両面実装や積層基板など「裏面」や「三次元」といった方向に技術が進展してきましたが、現在半導体で起きているのはそれと同じ流れです。BSPDNのようにチップ側に機能を持たせることが現実になると、半導体だけではなく基板や製品設計の自由度が格段に広がります。基板側で今まで一所懸命に埋変わる前工程と後工程の境界線

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