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6制約もあるので設置数には限界があります。このような背景もあり純水素型燃料電池には期待しています。現時点で水素は他のエネルギーと比較すれば高価ですが、経済産業省が2023年6月に発表した水素基本戦略において2030年に水素供給コストは30円/Nm3(約334円/kg)を目指すと宣言されています。この動向を注視しながら、2030年以降は本格的に水素エネルギーを使った取り組みを拡大していくべく準備を進めています。「OWN IMPACT」の達成に先駆けて、2023年1月にはパナソニック オートモーティブシステムズが、国内6拠点、海外8拠点、合計14のグローバルの全拠点で、CO₂排出量実質ゼロを達成しました。具体的には、年間約9万トンの排出量を省エネルギー施策や再生可能エネルギー、環境証書などの購入によりゼロ化しました。これは全事業会社の中でも先んじた達成となります。この背景には、再生可能エネルギー100%の製品を求める顧客の声が大きく関わっています。特に欧州の自動車部品OEMなどでは、CO₂排出値を明示できないパーツは使わないという流れになっています。この潮流はだんだんと加速しており、企業規模を問わずグローバルに部品を提供している企業は直面せざるを得ない課題だと考えています。「CONTRIBUTION IMPACT」は、既存事業による社会へのCO₂排出削減貢献インパクトです。2024年度のお客様や社会へのCO₂削減貢献量を3,830万トン、2030年度のCO₂削減貢献量を9,300万トンに設定し、2050年までに1億トンのCO₂排出削減貢献を掲げています。その中でもインパクトが大きいものが車載電池です。ガソリン車がEVに変わることで走行時のCO₂は発生しなくなりますから、足下の貢献度は非常に大きいです。EV用車載電池の開発は、2000年代にテスラモーターズからEV用リチウムイオン電池の供給を打診されたことから始まりましたが、充電池そのものの開発はポータブルオーディオの時代にまで遡ります。最初は単三電池で動いていたポータブルオーディオを充電式にするべく、ニッケル水素電池などの開発に取り組んできました。その後はさまざまな製品の中でモバイルバッテリーとして発展を遂げています。ですから、技術そのものは長年培ってきたものになります。ただ、我々が長年手掛けてきた電池とEV用リチウムイオン電池では、求められる電力量が格段に違います。そのため、いかに1本の電池に多くの電力を蓄えられるかが、これまで培ってきた技術からの延長線となります。我々は電池自体の直径を少しずつ大きくして容量を高めたりするなどの工夫を積み重ねてきました。それに加えて安全性を高める技術開発を進めています。幸いなことに、現在まで当社のバッテリーが原因でEV車に不具合がでたという報告は受けていません。引き続き、安全性を担保しなら、2030年までにEV用電池の容量を現行の1リットル当たり800Whから1,000Whに段階的に引き上げる予定です。また電池の材料についても触れておくと、可能な限りレアメタルへの依存度を下げることに注力しています。最近では米中対立やロシアとウクライナ戦争が勃発するなどの地政学的リスクも生まれています。これを回避するためにも、できるだけレアメタルに依存する比率を下げていかなければなりません。特にコバルトは増加する需要に対して安定的な供給が難しいため、我々は2017年の北米工場の立ち上げ当初から電池セルひとつ当たりのコバルト使用量を通常の半分程度に抑えた製品を生車載電池の改良と安定供給で継続的なCO2削減に貢献

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