KAWA-ORIGAMI。世界からも高い評価を得る製品が生まれた背景を探るため、東京墨田区の工房を訪ねた。K日本Aの伝統W文化A「折り-紙」にO着R想を得Iて生GまれAた革製M品I不要なものをそぎ落とす日本の美意識を表現した裏地に金型を置き、裁断機(クリッカー)で裁断する。撮影にご協力いただいたのは70年以上のキャリアを誇る赤羽 弘さん(東京マイスター)二宮五郎商店の「KAWA-ORIGAMI®」は、一枚革と最小限の部品のみを使い、革が折り紙のように折りたたまれて作られた革製品。縫製が少ないため、やさしい丸みを帯びたシルエットになり、革の質感をダイレクトに感じることができる。上質かつミニマルな美しさを併せ持つKAWA-ORIGAMI®は、日本はもとより世界でも高く評価され、イタリアの有名セレクトショップ「コルソコモ」でも販売されている。このような商品を手掛ける二宮五郎商店とは、どのような集団なのだろうか。そもそも二宮五郎商店のある墨田区は“革の街”として知られている。関東近郊に養豚場が多かったことから、墨田区のなめし工場に皮が集まり始め、明治末期頃から豚革の生産が盛んになったとか。ちなみに、豚の皮は牛とは異なり、世界的に見ると食肉とともに流通してしまい、素材として扱われることはほぼないという。しかし日本では豚の皮を食べないため、副産物として革へと加工され流通するシステムができたそうだ。そんな歴史のある墨田区に、初代・二宮五郎氏が高級革製品メーカーを設立したのは昭和21(1946)年のこと。以来、シチズンの時計バンドや銀座和光のハンドバッグなどを制作。最高級の革を使用し、革の個性を引き出す高度な技術が認められ、国内・海外の有名ブランドのOEM、そして独自のアイデアや世界観をもつオリジナルの革製品を次々と生み出し、今や“革界のレジェンド”とさえいわれ、一目置かれる存在になっている。二宮五郎商店が創業以来一貫して大切にしてきたことに、多技能職人制度が挙げられる。業界的に各工程の分業化が進む中、ここでは型紙制作、型入れ、裁断、下ごしらえ、縫製、金具取付、仕上げまで、基本的にひとりの職人が担当。そうすることで、高品質かつ統一感のある製品が完成するのだという。アコーディオンのようにマチが外側にあり、薄くてスマートな仕様だから名刺やお札を引っかけずに出し入れできる「風琴マチ」をはじめ、ひとり(左上)子牛やヤギ、イタリアの牛革をベースにした「網代編みグレインレザー」など、KAWA-ORIGAMI®シリーズに使う皮革の例 (右上)名刺入れの金型。左が表地、右が裏地用。本型に比べると少し大きめのサイズになっている (左)KAWA-ORIGAMI®の名刺入れに使用した道具の一部。用途に合わせたさまざまな種類のナイフ、ヘラ、金具を取り付けるために穴を開けるポンチ、叩いて形を整えるための金づちなど(上)裁断された表地と裏地(下)表地を漉くための型20クラシックスタイルながら古臭さを感じさせない二宮眞一氏1946年創業「株式会社 二宮五郎商店」2代目。国内及び世界的ブランドのOEMと独自の世界観を表現したオリジナル製品を制作する老舗レザーメーカー。ホーウィン社のシェルコードバンをはじめ、アメリカ、イタリア、ドイツ、フランスの歴史あるタンナーの優れた革を厳選して使用。販売先は国内のみならず、ノルウェー、イタリア、シンガポールなど幅広い。
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